VMware vSphere+の「管理者向けサービス」概要との3つの特徴

さまざまなクラウドサービスの活用が拡大する中、仮想化基盤のワークロード管理がオンプレミスとクラウドで分散し、複雑化するという問題が発生しています。この課題を解決すべくヴイエムウェアは、オンプレミスで運用しているvSphere環境をクラウドから一元管理する新たなソリューションとして「VMware vSphere+」を発表しました。これによりオンプレミス側の管理が具体的にどのように変わるかを解説します。

目次

オンプレミスとクラウドが混在したワークロード管理の課題

Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform (GCP)などのパブリッククラウドやさまざまなSaaS、オンプレミスの仮想化環境を適材適所で組み合わせて利用する、マルチクラウドの運用形態が拡大しています。さまざまな業務に最新のテクノロジーを柔軟に取り入れられる、リモートワークをはじめとする従業員の多様な働き方に対応できるなど、マルチクラウドは企業に多くのメリットをもたらしています。

ただし、メリットの裏側にはデメリットもあるのも事実です。オンプレミスとクラウドが混在した環境下で複数の仮想化基盤が乱立してサイロ化し、ワークロード管理が複雑化しているのです。それぞれで異なる管理ツールや運用ノウハウの習得が追いつかず、インフラ提供のスピードや効率性が低下し、定常的なメンテナンス業務にも手が回らないといった問題が発生しています。

VMware vSphere+ の概要と構成イメージ

上記の課題を解決すべく、ヴイエムウェアは「VMware vSphere+」を発表しました。VMware vSphere+とは、オンプレミスおよびクラウドで実行されるワークロードを統合的に管理するマルチクラウドプラットフォームです。これを導入することで、オンプレミスで運用している複数の仮想化環境(vSphere環境)をクラウドから一元管理することが可能となります。

VMware vSphere+は、VMware Cloud (VMC)の一元的なコンソールである「Cloud Console」から、複数のクラウドに分散して運用しているvSphereインベントリ全体を可視化します。このVMware Cloud Servicesのメリットを、オンプレミスのvSphere環境のワークロードにも適用するのです。

vSphere+ のアーキテクチャ
これまで複数のvCenter Serverで管理され、サイロ化したオンプレミスのvSphere環境の一元管理が可能となり、運用効率を改善できます。

「Cloud Gateway」を経由することでクラウド側から一元管理を実現

準備としてオンプレミスのvSphere環境に「Cloud Gateway」という仮想アプライアンスを設置し、VMware Cloud上のCloud Consoleと接続します。これによりオンプレミスのvCenter ServerがCloud Gatewayを通じてCloud Consoleに登録され、運用管理のさまざまな操作をクラウド側から一元的に行えるようになります。

Cloud Gateway によってオンプレミスの vCenter Server インスタンスとVMware Cloud との間の通信が確立され、クラウド側のCloud ConsoleからオンプレミスのvSphere環境を容易に監視・管理できるようになるというのが基本的な仕組みです。

なお、オンプレミスのvSphere環境で運用している仮想マシン(VM)やvCenterが直接クラウドと接続されるわけではありません。Cloud Gatewayがある種のプロキシ的な役割を果たすためセキュリティも担保されます。

オンラインラボで「vSphere+」の操作感を体感可能

VMware社が提供するVMware HANDS ON LABSでは、Cloud Gatewayの展開といったvSphere+の操作感を確認することができます。オンラインラボについては、以下の記事でご紹介しています。

vSphere+の「管理者向けサービス」内容と3つの特徴

vSphere+ では、インフラ管理者に向けた「管理者向けサービス」と、アプリケーション開発者に向けた「開発チーム向けサービス」の2種類のサービスがあり、それぞれの立場で必要になる各種機能を提供しています。

「管理者向けサービス」としては、生産性を大幅に向上する以下の機能が提供されます。

管理者向けサービス概要
Cloud ConsoleVMware Cloud Console を介して管理とガバナンスを一元化
グローバル インベントリ サービスキャパシティとリソースの使用状況を視覚化して迅速に把握
イベント ビュー サービスvSphere 環境全体のイベントとアラートをまとめて表示
セキュリティ健全性チェック サービスvSphere 全体のセキュリティを評価して、脆弱性やリスクを特定
仮想マシン プロビジョニング サービスCloud Console から、任意のクラスタに仮想マシンを迅速に展開
ライフサイクル管理サービスメンテナンスを短縮し、新機能をより早く実行
構成管理サービスvCenter の構成エラーを自動的に検知、修正
vSphere+の管理者向けサービス

特徴①:複数vSphere環境の一元管理を実現する「Cloud Console」

Cloud Consoleで分散するvSphere環境の管理とガバナンスを一元化して、運用効率を向上することで、管理者の生産性が飛躍的に向上します。

Cloud Consoleにより、分散されたvSphereインベントリ全体を可視化することを先に述べました。これによりVMware vSphere+では、キャパシティとリソースの使用状況を迅速に把握することができます。加えてvSphere 環境全体のイベントとアラートをまとめて表示するイベントビューや、vSphere環境全体のセキュリティを評価して脆弱性やリスクを特定するセキュリティ健全性チェックといったサービスも用意されています。

これらの機能を活用することで管理者は、vSphere環境のグローバルイベント、アラート、セキュリティ体制の総合的な監視が容易になり、緊急の対応が必要な領域のトリアージを迅速に行えるようになります。さらに各vCenter Serverについて、キャパシティ使用量、クラスタ数、仮想マシン、コア、ホストなどの詳細を把握することができます。

また、Cloud Console から任意のクラスタに仮想マシンを迅速に展開する仮想マシンプロビジョニングのサービスも用意されています。vSphere 環境内のすべての仮想マシンを確認しつつ、必要なキャパシティを持つクラスタを特定し、必要に応じて仮想マシンを作成することが可能となります。

インベントリ情報の可視化
VMware Cloud に接続されているすべてのオンプレミスvCenter Serverインスタンスを表示

特徴②:ライフサイクルや構成管理の自動化

さらにvSphere+は、オンプレミスのvSphere環境に対してクラウドベースの自動化機能も提供します。

その1つが「ライフサイクル管理サービス」です。vCenter Serverインスタンスのアップデートをワンクリックで実現するもので、メンテナンスに費やしていた工数や時間を低減します。アップデートをより高い頻度で実行することでvSphere環境を常に最新の状態に保ち、すべての新機能を活用できるようになります。

もう1つが「構成管理サービス」です。vSphere 環境全体でvCenter Server構成を標準化することで、vCenterの構成エラーを自動的に検知し、修正を支援します。Desire State Profileと呼ばれる機能をベースとするもので、ESXiホストの設定をプロファイル化して構成管理を行うホストプロファイルの機能をvCenterから利用できる仕組みとなっています。

従来、VMware vSphere環境のライフサイクル管理では、新しいホストへESXiやファームウェアをインストールする際も、あるいはESXiやファームウェアを新バージョンにアップグレードする際にも、そのすべての操作を手動で行わなければなりませんでした。「VMware vSphere Lifecycle Manager」を利用することで集中的な管理が可能となりますが、この管理ツール自体のスキルを習得する必要があります。

これに対してVMware vSphere+では、このように煩雑だったライフサイクル管理のタスクもすべてVMware Cloud コンソールから一括して行えるのです。前述したようにvCenter Serverのアップデートをクラウドから実行し、バックアップを取得することも可能です。構成管理も同様で、任意のvCenterを指定したプロファイルの作成から、プロファイルの順守状況の確認まで、すべてVMware Cloud コンソール上で行うことができます。まだ発展途上とはいえ、オンプレミスのVMware vSphere環境のマネージドサービス化に一歩近づいたと言えるでしょう。

特徴③:VMware社のクラウドサービスとのシームレスな連携

vSphere+はVMware社が提供するクラウドサービスとも親和性が高いことも特徴です。オプションとしてvSphere環境に対する災害対策ソリューションである「VMware Cloud Disaster Recovery(VCDR)」のサブスクリプションを導入した場合には、VMware Cloud コンソールから直接仮想マシンを保護するとともに、その保護ステータスを管理することができます。

また、VCDRへのアドオンとして提供される「VMware Ransomware Recovery」を利用することで、ランサムウェアの対策も可能です。

vSphere+の「開発者向けサービス」について

vSphere+の「開発者向けサービス」については、以下の記事でご紹介しています。

まとめとネットワールドのvSphere+導入支援体制

VMware Cloud上のCloud Consoleと接続することで、複数のvSphere+環境の管理とガバナンスを一元的に管理することができる「VMware vSphere+」の管理者向けサービスをご紹介しました。vSphere+ によって環境全体のCPU・メモリ・ストレージの消費量といった情報を簡単に取得できるようになり、インフラストラクチャとワークロードに対する適切なキャパシティ・プランニングが可能になります。

また、クラウドベースの自動化機能でライフサイクル管理を簡素化し、オンプレミスに対してクラウドサービスのような価値を提供します。既存の仮想環境をvSphere+にアップグレードすることで、現在主流であるサブスクリプションモデルのライセンス管理へと移行することが可能です。

ネットワールドではVMware vSphere+をスムーズに導入・活用いただくために、お客様に合わせてヒアリングから各コンポーネントの導入、操作手順書の作成、トレーニングの実施、導入後のオフサイトサポートまでトータルに対応する「導入支援サービス」を提供しています。基本的なサービスに加えて、お客様に要望に応じた個別のサービスカスタマイズも可能で、VMware vSphere+ をご検討の際は、ぜひネットワールドまでお問合せください。

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