3大クラウドAWS・Azure・GCPの特徴と使い分け

3大クラウドAWS・Azure・GCPの特徴と使い分け

前回は、企業の間でマルチクラウドの利用が進む背景と、典型的なマルチクラウドの形態、そしてよく似たイメージのあるハイブリッドクラウドとの相違点について解説しました。このコラムでは、俗に“3大クラウドプラットフォーム”と呼ばれる3つの代表的パブリッククラウドの特徴や強みを紹介するとともに、企業がパブリッククラウドを活用することのメリットについて、改めて考えてみましょう。

目次

“3大クラウド”それぞれの横顔

AWSのイベントで実施されたアンケート*によれば、今や約40%の企業が2つ以上のクラウドを利用する「マルチクラウドユーザー」であり、そしてそのうちの約18%は“3大クラウドプラットフォーム”である、AWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)の3つを利用しています。そしてマルチクラウド活用においては、この3つのパブリッククラウドについて、適材適所で使い分けると共に、いかに効果的かつ効率的に組み合わせることができるかが、1つのポイントとなってくると言っても過言ではありません。そこで、そのために欠かせない、世界を代表する3つのクラウドプラットフォームそれぞれの違いや特徴、得意分野など、最低限知っておくべき内容について紹介します。

<注>*2018年11月に開催されたAWS「re:Invent」における、テクニカルエグゼクティブやビジネスエグゼクティブを対象としたアンケート調査

Amazon Web Services(AWS)

現在、世界で最も多く利用されているクラウドサービスとも言われるのが、世界最大のECサイトでもあるAmazonが提供するクラウドサービスAWS(Amazon Web Services)です。皆さんよくご存知のとおり、Amazonが展開しているサービスは、インターネット通販をはじめとして、動画や電子書籍、音楽、アプリケーションなどの各種コンテンツ配信、AIスピーカーな多岐にわたっています。もともとAWSは、そうしたサービスの提供で培った知識やノウハウ、技術、そしてサービス提供のために構築・運用している自社のITインフラのリソースを生かすべく、2006年7月にスタートしました。

既に15年以上もの歴史があり、最も利用者も多いとされているだけに、AWSには過去から現在に至るまで非常に多くのユースケースがあり、メディアやSNSなどさまざまなかたちで情報提供や情報交換が活発になされています。こうした実績の豊富さこそがAWSの最大の特徴と言えるでしょう。このためAWSを扱った経験を有するエンジニアも多く存在しており、深刻なIT人材の不足が叫ばれるなかにあっても、比較的人材を確保しやすいはずです。

Microsoft Azure

PCやサーバーのOSで圧倒的な地位を誇るMicrosoftが提供するパブリッククラウドプラットフォームが、Microsoft Azureです。企業の間でWindows OSはクライアント環境の標準と言えることに加えて、サーバー環境についてもWindows Serverのシェアはトップに君臨し続けています。さらにはMicrosoft Officeは、WordやExcelを筆頭に業務アプリケーションの定番として長きにわたり使い続けられています。

2010年1月に正式なサービスがスタートしたMicrosoft AzureのベースとなっているのもこのWindowsです。当然ながらWindowsとの親和性が高いことから、Windows系のテクノロジーに精通したエンジニア等には特に扱いやすく、なかでもこれまでWindows Serverを利用していた企業にとっては少ない負担でクラウドへと移行ができるメリットがあるはずです。

さらに、多くの企業の間で利用されているクラウドグループウェア(SaaS)のMicrosoft 365や、広く社員管理にも用いられているディレクトリーサービスActive Directory(AD)との連携性の高さも人気の1つでしょう。

Google Cloud Platform(GCP)

圧倒的なシェアを誇る検索エンジンを筆頭に、動画配信サービスYouTube、クラウドフリーメールGmail、地図サービスGoogleMapなど、今や世界中の人々の生活に浸透した幅広いクラウドサービスを提供するGoogle。そんなGoogleが提供するクラウドプラットフォームの最初のサービスGoogle App Engine(GAE)が登場したのは2008年のことでした。

以来GCPは、膨大なデータを対象にした高速な検索処理や、ユーザーの属性や過去の履歴などに応じた最適な広告の提示など、Googleが自社サービスで培った技術やノウハウを生かしたさまざまなサービスを展開してきました。とりわけ最近では、ビッグデータ分析や、機械学習を始めとするAI活用といった、先端テクノロジーの利用基盤としても存在感が増しています。

3大クラウドサービスの特徴

3大クラウドをどう使い分けるか

ここまで簡単ながらAWS、Azure、GCPという3大クラウドプラットフォームの特徴について説明しました。では、マルチクラウド活用に当たりこれらのパブリッククラウドをどう使い分け、また組み合わせるかとなると、それぞれの特徴や強みと、自社のニーズやコスト、人材などさまざまな要件を踏まえながら考える必要があるでしょう。

一例を挙げると、業務システムの基盤としての実績が豊富なAWS上で基幹システムを運用しながら、グループウェアなどコミュニケーション系のシステムはMicrosoft Azure上に置き、ビッグデータの解析や機械学習の活用などにGCPを用いて、それぞれをAPIで連携して全体で1つのシステムを創出するといった利用法も考えられるでしょう。

もちろんコストの比較もポイントとなりますが、クラウドサービスであるため基本的に使った分が課金される従量制課金となるため、単純な比較は難しいと言えます。そのため自社の利用シーンを想定した料金シミュレーションによる比較も参考になることになるでしょう

そしてもちろん、3大クラウドプラットフォーム以外のククラウドサービスにも目を向けることも、より自社に適したマルチクラウド環境を構築するために有効かもしれません。

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