VMware SD-WAN 徹底解説 Standard編 〜賢く使ってコストダウン〜

VMware SD-WAN 徹底解説 Standard編 〜賢く使ってコストダウン〜

「VMware SD-WAN」は、サブスクリプションで利用するオーケストレーターのエディションによって機能や価格が異なります。具体的にはStandard、Enterprise、Premiumの3つのディションが選択可能となっており、Standardは最もシンプルかつ低コストで利用できるエディションです。

目次

VMware SD-WAN Standardの概要

VMware SD-WAN by VeloCloud Standardで構築できるのは、データセンターと複数の拠点を1対多で結ぶハブ&スポーク型VPNです。

「各拠点のエッジ機器を安価に一元管理することができ、簡単導入が可能なVPN装置を検討している」、「高価なMPLS(専用線)などの回線を低価格な回線に置き換えてコスト削減したい」といったニーズをもつ企業にお薦めです。

通信をデータセンターに集約するハブ&スポーク型VPN

VMware SD-WAN Standardでできること

VMware SD-WAN Standardでは、次のような機能を利用することが可能です。

Edge Appliance

各拠点に設置されるSD-WANルーターで、Edge間でのVPN接続やアプリケーション単位の経路制御・優先度設定を行います。

VMware SD-WAN Orchestrator

VeloCloudを設定するクラウドサービスのサブスクリプションで、すべてのVeloCloud Edgeとゲートウェイに対してクラウド上のポータルから管理・変更・監視が可能です。

Dynamic Multi-Point Optimization (DMPO)

回線の品質状態を監視し、状況に応じた最適化を行います。WAN回線の品質が劣化した際は、FEC(Forward Error Correction)機能でパケットロスを補正することで快適な通信品質を提供することが可能です。また、複数のWAN回線を同時にActive-Activeで使用することや、特定の回線を指定して使用することも可能です。

こんな場面でVMware SD-WAN Standardをお薦め

MPLSを増強するよりも割安

本社と拠点をMPLSで接続しており、通信トラフィックが増大して回線が逼迫してきた場合、より大きな帯域幅の回線へと増設(契約変更)する必要があります。しかし、当然ながら費用も高額になっていきます。そうした場面では、VMware SD-WAN Standardへのリプレースを検討する価値があります。VMware SD-WAN Standardならば、MPLSよりもはるかに安価なインターネット回線(ブロードバンド回線)を活用できるからです。

しかも、既存のMPLSとブロードバンド回線を組み合わせる、複数のブロードバンド回線を組み合わせる、ブロードバンド回線とモバイル回線を組み合わせるといった柔軟なアグリゲーションを行えるほか、Active-Standby構成で利用していたネットワークをActive-Active に変更することも可能で、通信容量を容易に拡大することができます。

VPNをアップグレードするよりも割安

エントリーVPNやインターネットVPNは、安価にVPNを利用できるサービスとして知られていますが、通信事業者の閉域網を利用しているわけではなく途中経路にインターネットを利用しているため、通信品質は保証されません。そこで、より高品質な通信が求められる場合は、IP-VPNや広域イーサネットなどの上位サービスに変更する必要があります。そんなとき、まずVMware SD-WAN Standardを検討してみましょう。前述したDMPOによりパケットロスを補正し、エントリーVPNやインターネットVPNをそのまま使った場合でも通信品質を大幅に改善できる可能性があります。

VMware SD-WAN Standardのユースケース

小売業を例にとり、VMware SD-WAN Standardが具体的にどのように活用できるか考えてみます。各店舗にPOSレジを配備し、売上データをリアルタイムに本部側に転送して販売管理や在庫管理、マーケティング分析などを行っている小売業は数多くあります。しかし、ここで使われている通信回線は一般的に容量が小さく、店舗側がメリットを享受できるようなサービスを提供することはできませんでした。

そこにVMware SD-WAN Standardを導入することで、複数回線をアグリゲーションしての高速化や、DMPOによる通信品質の改善などが可能となり、店舗と本部間のよりリッチな双方向の通信サービスを実現することができます。例えば店舗スタッフの教育マニュアルや、店頭に並べきれない多彩な商品のカタログなどのコンテンツを配信することも可能となります。さらに進んだ小売業の中では、本部から配信された最新カタログをタブレットに表示して接客し、通販サイトに誘導するといったオムニチャネル的な活用を行っているケースも見られます。

なお、VMware SD-WAN Standardのエッジ機器は、拠点側のスタッフに初期設定や運用管理などの負担をかけないいわゆる「ゼロタッチ・プロビジョニング」で導入することができます。こうした手軽さも大きなメリットとなっています。

VMware SD-WAN Standardの注意点

ただし、VMware SD-WAN Standardで実現できることには限界があります。3つのエディションの中で最も手軽に導入することができますが、その代わり制約があるのです。厳密な意味でのSD-WANの機能要件を満たしているとは言えず、特に次のような点には注意が必要です。

注意点1:ネットワークの負荷分散ができない

ハブ&スポーク型 VPN では、常に通信をデータセンターのゲートウェイに集約してから、各拠点とインターネット回線を利用した通信を行います。したがってデータセンター側の負荷を下げることにはつながりません。

注意点2:SD-WANの目玉機能を利用できない

SD-WANならではのメリットとして、アプリケーション単位でのQoSの設定やローカルブレイクアウトなどが注目されていますが、VMware SD-WAN  Standardではこれらの機能は利用できません。

注意点3:拠点ごとの帯域別のVPNの購入ができない

例えばデータセンターと拠点Aの間で必要な帯域は20Mbps、拠点Bとの間で必要な帯域は100Mbpsとばらついていても個別設定はできません。全拠点でStandard 100Mbpsのサブスクリプション購入が必要となります。

VMware SD-WAN Standardのできることと注意点

完全なSD-WANメリットを受けるにはEnterpriseへのアップグレードを

Standard、Enterprise、Premiumの各エディションで利用できる機能との違いについては、下図の表をご参照ください。

VMware SD-WAN のエディションによる違い

繰り返しますが、VMware SD-WAN Standardにはシンプルに導入できる反面で多くの機能制限があります。SD-WAN本来のメリットを享受するためにも、将来的にはぜひ上位エディションへのアップグレードを検討することをお勧めします。それと合わせて、広範囲のセキュリティ対策が可能なVMware SASE構成への拡張もぜひご検討ください。

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