クラウドネイティブアプリケーションの構築が可能な「VMware Cloud on AWS」では、高度なアプリケーションや開発用にに多くのストレージリソースが求められるケースがありますが、ストレージ容量が枯渇した場合は新たなSDDCホストの追加が必要であり、この点は「VMware Cloud on AWS」におけるストレージ運用の課題となっています。
本記事では、「VMware Cloud on AWS」における新たなストレージの選択肢である「VMware Cloud Flex Storage」と同時期にアナウンスされた、「Amazon FSx for NetApp ONTAP (FSxN)」を活用した外部ストレージ活用の概要およびユースケースについてご紹介します。
「Amazon FSx for NetApp ONTAP (FSxN)」とは?
「Amazon FSx for NetApp ONTAP」はAWS社のマネージドサービスであり、オンプレミスで採用されているNetApp機能と同等のユーザー体験を、AWS社がクラウド上に展開した「NetApp ONTAP」で提供するストレージサービスです。
「Amazon FSx for NetApp ONTAP」はAWSのコンソールから管理を行います。普段AWSを使っているユーザーにとっては他のAWSサービスと変わらずに利用できるため、NetApp製品の専任技術者でなくても扱いやすいことも特徴の一つです。また、前述の通りAWS社のマネージドサービスであるため、ストレージソフトのバージョンアップといったサポートはAWS社が一貫して提供します。
AWS上で「NetApp ONTAP」を利用するケースとしては、Amazon EC2上で稼働する「Cloud Volumes ONTAP」という選択肢も存在します。「Cloud Volumes ONTAP」では「NetApp ONTAP」の展開はユーザー自身が行い、NetAppの管理ソフトを通して運用やストレージソフトのバージョンアップをユーザー自身が実施します。製品サポートはNetApp社からの提供となり、オンプレミスでのNetAppストレージ運用に近いことが特徴です。
「VMware Cloud on AWS」と「Amazon FSx for NetApp ONTAP」の統合
2022年に開催されたVMware社の年次イベント「VMware Explore」では、「VMware Cloud on AWS」における「Amazon FSx for NetApp ONTAP (FSxN)」の統合がアナウンスされました。その後、正式にサービスの提供が開始されています。
「VMware Cloud on AWS」におけるストレージ拡張の課題
「VMware Cloud on AWS」は、AWSクラウド上に「VMware vSphere」「VMware vSAN」「VMware NSX」などで構成される「VMware SDDC (Software Defined Data Center)」を構築し、「VMware vCenter Server」による統合管理が可能な「VMware Cloud」のサービスです。プライベートクラウドとの一貫性のある運用管理や、AWSネイティブサービスへの直接アクセスといったメリットを提供します。
「VMware Cloud on AWS」のストレージは、サーバが持つストレージリソースを利用する「VMware vSAN」によって提供されています。SDDCのストレージ容量を拡張したい場合は、SDDCを構成する「ホスト」を追加することで拡張が可能です。
そのため、CPUやメモリに余裕があったとしても、ストレージ不足からホストを追加しなければならないケースなど、SDDCの利用状況によっては無駄の多い投資が発生してしまうという課題がありました。
「Amazon FSx for NetApp ONTAP」の利用で、柔軟なストレージ拡張が実現
このようなSDDC環境におけるストレージに関する課題を解決できるのが、「VMware Cloud on AWS」 の SDDC クラスタにおいてNFSデータストアとして「Amazon FSx for NetApp ONTAP」を利用する、新たな統合ソリューションです。
これによりSDDCのホストを追加することなく「VMware Cloud on AWS」のストレージ容量の追加が可能になり、一時的なストレージ不足やストレージ容量が突出したSDDCにおいては、特に大きなコスト削減効果を発揮します。
「VMware Cloud on AWS」×「Amazon FSx for NetApp ONTAP」主な特徴
- 最大 192 TiB のフラッシュ容量を提供可能
- 99.99 %の可用性を提供(SLA)
- 重複排除や圧縮などのストレージ最適化機能を提供
「VMware Cloud on AWS」におけるNFSデータストアの利用方法
NFSデータストアとして利用する「Amazon FSx for NetApp ONTAP」を事前に構成し、SDDCとのネットワーク接続を確保することで、「VMware Cloud」のコンソールから簡単な操作でマウントすることが可能になります。
「VMC on AWS」で「外部NetAppストレージ」を活用する3つのユースケース
「VMware Cloud on AWS」ののNFSデータストアで「Amazon FSx for NetApp ONTAP」を利用する代表的な3つのユースケースをご紹介します。
①一時的なストレージ増設への迅速な対応
1つ目は、新規アプリケーションの開発や短期プロジェクトといった用途で、一時的にSDDCのストレージを拡張したいケースです。大きな予算が必要なホスト追加が不要になり、需要に応じた迅速なストレージ拡張を実現できます。
クラウドサービスである特徴を活かして、増設したストレージは利用終了後にすぐ削除してコストを最小化する運用が可能です。
②ストレージ容量が突出したSDDCでの恒久的な利用
2つ目は、「VMware Cloud on AWS」環境における恒久的なストレージ拡張です。仮想マシンの要件に合わせて、「VMware vSAN」と外部ストレージ(Amazon FSx for NetApp ONTAP)を使い分けることで、ストレージ容量が突出したSDDC環境において大きなコスト削減を実現することができます。
さらに、SDDCホスト数の増加を抑えることでOSなどの「ライセンスコスト」の削減も期待できます。
この外部ストレージ活用についてネットワールドで検証を行ったところ、最大50%以上のコスト削減が可能なことが確認できました。
こちらの検証では、「VMware Cloud on AWS」×「Amazon FSx for NetApp ONTAP 」のAzure版ともいえる「Azure VMware Solution」×「Azure NetApp Files」との比較も行っています。
③「NetApp ONTAP」の豊富な機能で運用負荷を軽減
3つ目は、NetAppの豊富な機能を活用したストレージの運用効率化です。企業のITインフラにおけるストレージとして広く採用されている「NetApp ONTAP」には、ストレージ管理に関する様々な機能が実装されています。
オンプレミスでNetAppを運用していた担当者とって使い慣れた機能を活用しつつ、AWSサービスならではのスピーディな展開によって、複雑なバックアップ要件などにも効率的な対応が可能になります。
例えばオンプレミスで利用されている以下のような機能は、「VMware Cloud on AWS」環境でも利用可能です。
NetApp機能 | 概要 |
---|---|
スナップショット連携 | ・世代数が増加してもI/O性能が劣化しない、優れたスナップショットアーキテクチャ ・vSphereと連携した高速・低負荷の迅速な仮想マシンクローンが可能 |
レプリケーション | ・オンプレミスからの移行や災害対策 ・他用途で同一データを使うことが容易 |
クラウドストレージ連携 | ・クラウドストレージにコールドデータを移行することにより、コスト最適化が可能 ・ストレージのデータをクラウドストレージにバックアップすることによりデータ分離を実現 |
VMwareソリューションによるクラウド活用はネットワールドまで
SDDC環境への追加ホストを必要とせずに「VMware Cloud on AWS」のストレージを段階的に拡張できる「Amazon FSx for NetApp ONTAP (FSxN)」についてご紹介しました。一時的なストレージ拡張ニーズはもちろん、ストレージ容量が突出しているSDDC環境において、大きなコスト削減効果や運用管理の効率化が期待できる注目の統合ソリューションです。
「Amazon FSx for NetApp ONTAP」を活用した「VMware Cloud on AWS」のストレージ拡張をはじめ、VMware Cloudサービスの導入をご検討の際は、VMware Cloudに関する豊富な導入支援サービスを提供するネットワールドまで是非お問合せください。