「VMware Cloud Flex Storage」とは?〜VMC on AWSにおける新たなストレージの選択肢〜

データベース、ビッグデータ、分析、AI、EDA、メディア処理など、VMware vSphere環境のワークロードにおけるデータ要求は高度化していく一方です。この変化に対応すべくヴイエムウェアが新たに発表したのが「VMware Cloud Flex Storage」です。VMware Cloud Flex Storage はVMware社のクラウドサービス「VMware Cloud」のサービスとして提供されます。

本記事では、従来から提供されてきたVMware vSANやAWSのストレージサービスに対して、VMware Cloud Flex Storageがどんな特徴を持っているのかを解説します。

目次

VMware Cloud on AWS におけるストレージの考え方

VMware Cloud on AWS」は、AWSクラウド上に「VMware vSphere」「VMware vSAN」「VMware NSX」などで構成される「VMware SDDC (Software Defined Data Center)」を構築し、VMware vCenter Serverで統合管理ができるクラウドサービスです。

「VMware Cloud on AWS」はストレージ仮想化ソリューション「VMware vSAN」を中心に、VMware vSphereワークロードに対して複数のストレージの選択肢を提供しています。

新しく発表されたVMC on AWS環境におけるストレージの選択肢

VMware vSAN (vSAN)

1つ目の選択肢は、VMware vSANの利用です。Amazon EC2ベアメタルインスタンスの内部ストレージを仮想的なストレージプールに統合し、VMware Cloud on AWSの主要なストレージプラットフォームを構成することができます。

特にVMware Cloud on AWSをオンプレミスのVMware vSphere環境とシームレスにつないだ拡張インフラとして利用する場合、VMware vSANを利用することで比較的容易に、堅牢かつパフォーマンスの高いストレージを構成することができます。

VMware Cloud Flex Storage

2つ目の選択肢は、今回新たに発表された「VMware Cloud Flex Storage」です。性能よりも容量を必要とするワークロードを中心に、使用容量に対する柔軟な課金体系で提供されるサービスです。VMware Cloud Consoleを数回クリックするだけで、ホストを追加することなくストレージ環境を拡張し、アプリケーション単位で必要に応じてストレージ容量を柔軟に増減することが可能です。

VMware Cloud Flex Storageは、これまでVMware Cloud on AWS向けのDRソリューションとして提供されてきた「VMware Cloud Disaster Recovery (VCDR)」のテクノロジーを応用したクラウドストレージで、VMware Cloud on AWSへのデータストアレベルのアクセスを提供します。

VMware Cloud Flex Storage の特徴

AWSのストレージサービス

3つ目の選択肢は、AWSが提供しているストレージサービスの利用です。今回の発表では、より高性能を求めるユーザーに向けたサービスとして新たに「Amazon FSx for NetApp ONTAP」が利用可能になりました。

Amazon S3やAmazon FSxなど、AWSのストレージサービスを利用してVMware vSANからストレージコンポーネントをオフロードすることで、ホスト台数の削減やコスト最適化を実現できる場合があります。

特に大規模な非構造化データを扱う場合、AWSのストレージサービスは最適なソリューションとなるケースがよくあります。 さらにその他の選択肢として、各MSP(Managed Services Provider)やAWSパートナーが独自に提供しているストレージサービスを利用することも可能です。

「VMware Cloud Flex Storage」の特徴

「VMware Cloud Flex Storage」はマルチクラウド環境に対応し、VMware Cloud on AWS 向けにネイティブに統合されたエンタープライズクラスのクラウドストレージサービスです。構築されたSDDCクラスタにおいてNFSデータストアを直接マウントすることが可能であり、シンプルな従量制の課金体系で利用することができます。

VMware Cloud Flex Storage はヴイエムウェアによるマネージドサービスとして提供され、下記のような特徴を備えています。

拡張性と伸縮性の向上

データストアごとに最大 400 TiBまでの論理/使用可能な容量を拡張することが可能。ホストを追加購入することなく昨今のデータ容量の増大に対応

運用の簡素化

「VMware Cloud Flex Storage」と「VMware Cloud on AWS」との間でシームレスに統合された使いやすい環境を提供し、効率的なストレージ運用を実現

コストの最適化

使用したリソース分のみ料金を支払い、必要に応じて容量を拡張可能。無駄なホストを追加することなく、ストレージに関する運用コストを削減

これらの特徴を生かし、VMware Cloud Flex Storageでは下記のようなユースケースが想定されています。

クラウドへのシームレスな移行

データレイヤーのリワークやストレージの再設計を行うことなく、仮想マシンをリフト&シフトでVMware Cloud on AWSへ移行することができます。

柔軟なデータセンターの拡張

不要なホストを追加することなくストレージ容量を動的に拡張し、柔軟にデータを保存することができます。また、VMware vCenter コンソールから一元管理することで、一貫性をもったエンタープライズクラスのハイブリッドクラウド環境を実現できます。

ストレージの負荷が高いワークロードのスケーリング

あらゆるワークロードに個別に適合するように、パフォーマンスとストレージ容量をシームレスに拡張することが可能です。大量のデータを迅速かつ費用対効果に優れた方法で拡張できる分離型サービスを提供します。

VMware Cloud Flex Storageと他のストレージとの使い分け

選択肢が増えたことで気になるのは、従来からのVMware vSANやAWSストレージサービスと、VMware Cloud Flex Storageとをどう使い分けるのかという点です。それぞれの違いについてご紹介します。

VMware vSAN との使い分け

VMware vSANの拡張性は、前述したようにAmazon EC2ベアメタルインスタンス(vSAN用ホスト)の内部ストレージの容量に依存します。したがってストレージ容量が足りなくなった際、CPUやメモリといったストレージ以外のサーバリソースにまだ余裕がある場合は、vSAN用ホストを増設せずに追加できる選択肢が求められ、VMware Cloud Flex Storage またはAWSが提供しているネイティブのストレージサービスにデータをオフロードすることになります。

VMware Cloud Flex Storage は数クリックの操作でリソースを増強できるNFS データストアであり、SDDC環境から独立したストレージのスケールアウトを提供します。増強時のコストを抑えつつ、必要なタイミングで利用後に削除するといった柔軟性を持っています。

また、VMware Cloud Flex Storage と比較するとvSANはパフォーマンスに優れたストレージ・ソリューションであり、性能を求める要件にはvSANストレージを、容量を重視する要件にはVMware Cloud Flex Storage、といった目的に応じたストレージリソースの使い分けを行うケースも考えられます。

NFSデータストアの「VMware Cloud Flex Storage」による拡張メリット

AWSのストレージサービスとの使い分け

Amazon S3やAmazon FSxにストレージ領域をオフロードした場合は、VMware Cloud on AWS上の各仮想マシンから明示的にアクセスしたり、マウントしたりする必要があります。したがって仮想マシンからAWSストレージサービスへの通信経路のほかセキリュティポリシーなども設定しなければなりません。

これに対してVMware Cloud Flex Storage はVMware社のマネージドサービスであり、VMware Cloud on AWS上に構築されたSDDC Clusterにおいて直接NFSデータストアをマウントすることが可能です。したがって、データのオフロードをできる限りシンプルな運用を実現したい場合には、AWSネイティブのストレージサービスよりもVMware Cloud Flex Storageを選んだほうが得策となります。

一方で、AWSマネージドサービスとして提供される「Amazon FSx for NetApp ONTAP」は、オンプレミスのハイエンド・ストレージのような高速なストレージ体験を提供する選択肢です。管理性やコストよりも「パフォーマンス」を優先したいケースでは、こちらも有力な選択肢となります。

スクロールできます
ストレージオプションVMware vSANVMware Cloud Flex StorageAmazon FSx for NetApp ONTAP
サービス提供VMwareVMwareAWS
課金の対象使用するホスト使用した容量容量・性能など
投資コスト
VMCへの増強の手間
パフォーマンス

VMwareソリューションを活用したクラウド活用はネットワールドまで

今回はシンプルな従量課金によって様々なストレージニーズに対応する「VMware Cloud Flex Storage」についてご紹介しました。VMware Cloud Flex Storage や VMC on AWS、その他VMware Cloudサービスの導入をご検討の際は、VMware Cloudに関する豊富な導入支援サービスを提供するネットワールドまで是非お問合せください。

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