VMware vSphere Kubernetes Serviceとは?~オンプレミス、クラウド、エッジを自在に管理~
今回は、オープンソースであるKubernetesをベースに開発されたコンテナランタイム「Tanzu Kubernetes Grid(現:VMware vSphere Kubernetes Service)」をご紹介します。「VMware vSphere Kubernetes Service」により、vSphereベースのオンプレミスシステム、VMware Cloud on AWS、VMware Cloud Provider、パブリッククラウド、エッジなどさまざまな形態のクラウド環境にKubernetesクラスターを構築できます。アクセス権限管理、セキュリティ管理など既存の仕組みの流用も可能です。
Tanzuの各種プラットフォームのコンセプト
Tanzuサービスとして提供が開始され、現在はvSphereブランドに変更された「VMware vSphere Kubernetes Service(旧称:Tanzu Kubernetes Grid)」は、KubernetesとvSphereで構築した仮想マシンを一元管理できるプラットフォームです。
Tanzuの各種プラットフォームは、「開発者が求めるスピード」と「IT管理者が求める運用負荷軽減」を両立させます。vSphere、AWS、Microsoft Azure、IBM Cloud、Google Cloud、VMware Cloud on AWSなどマルチクラウドによって、基盤としてのインフラ面の強みをさらに伸ばした上で、ビジネスの最前線での戦い方を左右するアプリケーション開発にスピードを持たせることができます。
VMwareに関する技術やスキルをもつ人材を、ローリスクでコンテナ環境にもシフトできることは、IT人材不足の今日において大きなメリットです。
実行環境「VMware vSphere Kubernetes Service」のさまざまな役割
VMware vSphere Kubernetes Serviceは図のように、VMware vSphere上の仮想マシンに構築したオンプレミスなどをKubernetesで管理するためのコンテナランタイムです。オンプレミスのvSphere のほか、VMware環境をAmazon Web Services(AWS)で稼働させるVMware Cloud on AWS、サービスプロバイダー企業がVMware製品を用いて第三者企業にクラウドホスティングサービスを提供するプログラムを軸にしたVMware Cloud Provider、AWS/Microsoft Azure/Google Cloud Platforms(GCP)などのパブリッククラウド、製造業に工場やIoTの活用で増えるエッジデバイスやブランチといった外部の環境において、Tanzu Kubernetes Gridがコンテナイメージ管理、ライフサイクル管理などの機能を提供できます。
例えば、あるサービスを実装するとき、1つのKubernetesクラスターだけで完了することは、ほぼありません。例えば、開発、テスト、本番で1つずつ使えば3つのKubernetesクラスターが必要になります。さらに、それぞれアクセス制御のルールなどが異なるクラウドやオンプレミス上にまたがっているケースもしばしばです。
こうした複雑なKubernetes環境を管理できるのがVMware vSphere Kubernetes Serviceです。多くの企業がVMwareの仮想化環境でオンプレミスシステムを構築する中で、オンプレミスとクラウドをまたがって管理ができることがVMware vSphere Kubernetes Serviceの革新性と言えるでしょう。
VMware vSphere Kubernetes Serviceの特徴
VMware vSphere Kubernetes Serviceの機能を端的に述べると、「Kubernetesの管理とオペレーションをシンプルにすること」です。
コンテナを本番環境で実行する場合、数万のコンテナが稼働することになるため、企業は複数台のホストにコンテナを適切にデプロイしたり、可用性を確保したり、必要な場合にスケールさせたり、外部ネットワークからのリクエストを負荷分散したりするオーケストレーションの課題が生じます。これを解決するのがKubernetes です。
しかし、オープンソースのKubernetesでは、柔軟性は高いものの、必要なインフラも含めた運用を行っていくために高レベルの専門技術者を自社に抱えなくてはなりません。また、複数のデータセンターやクラウド環境をまたがって運用する場合、一貫した管理を維持することが非常に難しくなります。
VMware vSphere Kubernetes Serviceは、エンタープライズにおけるオンプレミスソリューションとして様々な非機能要件にも対応してきたアドバンテージを生かしつつ、オープンソースや業界標準にも配慮しベンダーロックインを排除することで、クラウドネイティブソフトウェアが提供する複数のメリットを引き出すことができます。
VMware vSphere Kubernetes Serviceの具体的な4つの特徴
簡単なインストール
VMware vSphere Kubernetes Serviceは、企業のデータセンターやVMwareのプライベートクラウド、パブリッククラウド、エッジ、マルチクラウド環境で、必要な時にスケーラブルなKubernetes環境を実装できるように開発されています。
マルチクラスター運用の自動化
大規模なマルチクラスターKubernetes環境の運用をシンプルにします。ライフサイクル管理を自動化してリスクを軽減し、企業のIT部門がより戦略的な作業に注力できるようにします。
統合サービスによってデプロイと管理を合理化
ロギング、モニタリング、ネットワーキング、ストレージサービスなどのローカルおよびクラスター内プラットフォームサービスのデプロイと管理を合理化して、本番稼働に対応したKubernetes環境を、より簡単に構成し維持します。
オープンソースの活用
クラスター管理を宣言的APIで実現するKubernetesプロジェクトであるCluster APIなどの主要なオープンソースを有効活用し、ベンダーロックインを回避し、柔軟性と移植性を確保します。
VMware vSphere Kubernetes Serviceを実行できる環境
VMware vSphere Kubernetes Serviceは、企業のさまざまなシステム環境をKubernetesで管理していくための中核となる機能です。では、具体的にVMware vSphere Kubernetes Serviceはどのように活用できるのでしょうか。IT部門の視点から場面ごとに例を紹介しましょう。
プライベートクラウド
既存のオンプレミスの資産を生かし、アプリケーションエンジニアがプライベートクラウドのKubernetesクラスターを、必要な時に利用できるようになります。
エッジ
VMware vSphere Kubernetes Serviceのオープンアーキテクチャーにより、例えば小売業界のリモートサイトロケーションのような、高い水準の技術を用いて分散化したエッジ環境において、軽量なデプロイと合理化されたマルチクラスター運用が実施できるようになります。これにより、新しい店舗の端末を認識して管理・保守にかかる工数を把握してコストを削減したり、本部がポリシーに沿って新規のコンテナアプリケーションを特定地域の小売店舗が定めたデバイス向けに配布、更新したりすることも可能になるでしょう。