VMware Tanzu Application Platformとは?開発サイクルを短縮するアプリケーションプラットフォーム

VMware Tanzu」ファミリーである「VMware Tanzu Application Platform」は、セキュアな事前設定テンプレートを活用することで、クラウドネイティブアプリケーションの開発を迅速化するアプリケーションプラットフォームです。

本記事では、VMware Tanzu Application Platformの基本的な特徴から最新のアップデートまでをわかりやすくご紹介します。

目次

アプリケーション開発者が求めるプラットフォームとは?

アプリケーション開発者が理想とするプラットフォームは、本来の目的である「コードの記述」に集中できる環境を提供するものです。開発者のミッションは「アプリケーションの機能を効果的に開発してユーザーに価値を提供すること」であり、基本的にインフラストラクチャやその他レイヤーの技術的な側面には関心がありません。

Kubernetesはその強力なツールセットと広範なエコシステムにより、現代のアプリケーション開発に革命をもたらしました。しかし、Kubernetes環境の設定や管理は複雑であり、構築・管理には多くの事前知識と経験が要求されることから、開発者自身が本来業ではない「管理・運用業務」に多くの時間と労力を割くことになってしまうケースが散見されます。

このような背景から、アプリケーション開発者が求めるプラットフォームとは「手間をかけずにKubernetesの利点を享受できるプラットフォーム」であると言えるでしょう。

VMware Tanzu Application Platformとは?

そこで登場するのが、開発者が効率的かつ安全にアプリケーションをデプロイできる環境を目指して設計された「VMware Tanzu Application Platform」です。

VMware Tanzu Application Platformは、豊富な開発者用ツール一式と事前定義された本番環境へのパスを提供するプラットフォームです。複数のOSS(オープンソースソフトウェア)で構成されており、クラウドネイティブのパターンを事前に定義した豊富なテンプレートを使用して、Kubernetes環境におけるアプリケーションの開発やデプロイを迅速かつ安全に行うことができます。

VMware Tanzu Application Platformでは事前定義された本番環境へのパスを構成し、最適化および効率化されたDevSecOps体験を提供します。開発者がコンポーネントのつなぎ合わせに費やしていた労力と時間を、優れたソフトウェアの構築に使えるようになり、収益を創出するアプリケーションを短期間で市場に投入できるようになります。

VMware Tanzu Application Platformの概要

VMware Tanzu Application Platformがもたらすメリット

VMware Tanzu Application Platformは、開発者の「インナーループ」と運用者の「アウターループ」を効果的に支援するプラットフォームを提供します。開発者と運用者・セキュリティ担当者の間で役割が明確に分離することで、アプリケーションの開発サイクルを大幅に短縮します。

インナーループはアプリケーションの「学習」「開発」「反復」「デバッグ」など、開発者がアプリケーション開発を行うフェーズです。一方で、アウターループはアプリケーションの「テストとビルド」「脆弱性調査」「デプロイ」「稼働」など、運用者が本番運用に向けてポリシーやセキュリティの管理を行うフェーズです。

アプリケーションの開発や更新をスムーズに進行し、新しい機能やサービスを迅速に市場に投入できるようになることが、VMware Tanzu Application Platformが提供する価値となります。

VMware Tanzu Application Platformのメリット

「VMware Tanzu Application Service(TAS)」との違い

「VMware Tanzu」ブランドでは、アプリケーションに関するさまざまなサービスがラインナップされています。開発者のアプリケーション開発を支援するサービスとしては、本記事でご紹介する「VMware Tanzu Application Platform(TAP)」の他にも、「VMware Tanzu Application Service(TAS)」というサービスが従来から存在しています。

VMware Tanzu Application Service(TAS)は、「Cloud Foundry」をベースにしたフルスタックPaaSソリューションです。実績の豊富なこのアプローチは、開発者に高い生産性を提供する一方で、いくつかの制約も存在します。特に、Kubernetesのエコシステムを最大限に活用することが困難であるという課題があります。

それに対して、2022年に新たに登場したVMware Tanzu Application Platform(TAP)は、Kubernetesを基盤として設計されており、Kubernetesの多くの利点とその広範なエコシステムを利用できるようになっています。最新技術を活用することでクラウドネイティブアプリケーションの開発を迅速化するだけでなく、アプリケーションのアーキテクチャをより詳細に制御できる柔軟性を開発者に提供します。

VMware Tanzu Application Service(TAS)とVMware Tanzu Application Platform(TAP)の比較

VMware Tanzu Application Platformの2つの特徴

特徴①:開発者支援ツールによる開発プロセスの効率化

VMware Tanzu Application Platformでは、開発者が最高のパフォーマンスを発揮できるよう設計された「開発者支援ツール」を提供しています。事前に設定されたテンプレートや承認済みAPIへの簡単なアクセスが可能で、開発者はすぐにコーディングを始めることができます。

開発者ツールには、繰り返しのコード実行やデバッグプロセスを効率化するためツールや、アプリケーションの健全性とパフォーマンスをリアルタイムで把握する機能も備わっています。開発プロセスをスムーズに進めることで、プロジェクトの進行を加速し、開発者が集中して高品質なアプリケーションを開発すること支援します。

開発やデバッグ、アプリケーションの件税制確認を支援するポータル(クリックで拡大)

特徴②:アプリケーションの開発作業と運用作業を分離

VMware Tanzu Application Platformは、開発者がコードをコミットするだけで、事前に設定されたサプライチェーンが自動的に動き出し、アプリケーションをシームレスかつ安全にプロダクション環境にデリバリーすることができます。

サプライチェーンは、Kubernetesのさまざまなリソースをテンプレート化する「Cartographer」というモジュール式のエンジンで構築・管理されています。Cartographerは各リソースの状態変更を他のリソースに連動させる役割を担っており、サプライチェーンを構成する各コンポーネントは、ニーズや状況に応じて別のリソースへと柔軟に差し替えることも可能です。

VMware Tanzu Application Platformの抽象化と分離の機能により、開発者はサプライチェーン構成の詳細を意識することなく、開発作業に集中することができます。

Kubernetesへの「従来」のアプリケーションデリバリー
「VMware Tanzu Application Platform」でKubernetesのさまざまなリソースをテンプレート化

VMware Tanzu Application Platformで柔軟なサプライチェーンを実現

特徴②の「サプライチェーン」は、VMware Tanzu Application Platformの中心的な要素となります。そのメリットをもう少し掘り下げてご紹介します。

即時利用可能な組み込みテンプレート

VMware Tanzu Application Platformでは、開発者が即座にプロジェクトを開始することができる「Out of the Box」なサプライチェーンが提供されます。クラウドネイティブパターンの事前設定テンプレートが組み込まれており、開発者が新しいプロジェクトを迅速に立ち上げる際の手間を大幅に削減し、本格的な開発作業へ直ちに取り掛かることが可能です。

「Out of the Box」なサプライチェーン

コンポーネントの柔軟なカスタマイズ

サプライチェーンのコンポーネントは、柔軟にカスタマイズが可能です。アプリケーション開発とコンポーネント選定はVMware Tanzu Application Platformによって分離されており、運用担当者の使い勝手の良いコンポーネントや特定の要件や制約を満たすコンポーネントを自由に選択でき、ビジネスモデルに最適化されたサプライチェーンを構築できます。

ニーズに合わせて柔軟なカスタマイズが可能なサプライチェーン

DevSecOpsパイプラインの構築とガバナンスの強化

VMware Tanzu Application Platformは、セキュリティ要件を満たしながらアプリケーションの迅速なデプロイを行うDevSecOpsにも対応しています。DevSecOpsは「開発(Dev)」「セキュリティ(Sec)」「運用(Ops)」を統合し、ライフサイクル全体にわたってのセキュリティを確保するアプローチです。

DevSecOpsは従来のソフトウェア開発と運用のプロセスを改善し、セキュリティを開発プロセスの初期段階から組み込むことで、セキュリティリスクを大幅に削減します。また、プロセスの自動化と迅速なフィードバックの導入により、製品のリリースサイクルを短縮することができます。

セキュリティ対策を含めた「DevSecOps」にも対応

新機能「VMware Tanzu Application Engine」とは?

2023年9月にラスベガスで開催された「VMware Explore 2023」で、VMware Tanzu Application Platform 1.6の新機能として「VMware Tanzu Application Engine」が発表されました。

VMware Tanzu Application Engineは、「Application Space」という新しい抽象化概念が導入することで、開発者・プラットフォームエンジニア・運用チームの間での関心事を明確に分離し、アプリケーション開発のスピードアップとガバナンス強化を実現します。

Application Spaceでは、適切なレベルの暗号化やアクセス制御、適切な種類のネットワーキングとセキュリティを提供することで、アプリケーションを相互接続する「空間」を作成します。Application Spaceという新しい抽象化レイヤーを導入することで、開発者はセルフサービスで承認されたアプリケーション環境を展開できるようになり、Kubernetesクラスタや関連インフラのアップグレードや保守を行う間でも、アプリケーション開発者はアプリケーションの管理と拡張を続けることが可能になります。

VMware Tanzu Application Platformの購入方法

VMware Tanzu Application Platformは「vCPU単位(1core =2vCPU)」のサブスクリプションで提供されます。

VMware Tanzu Application Platform
購入単位vCPU単位(1core =2vCPU)
Cloud Native Runtimes
VMware Tanzu Build Service
VMware Spring Runtime
Supply Chain Choreographer
VMware Tanzu Application Engine
(新機能・プライベートベータ版)

アプリケーションのモダン化のご相談はネットワールドまで!

開発者と運用者・セキュリティ担当者の間で役割が明確に分離し、クラウドネイティブアプリケーションの開発サイクルを迅速化する「VMware Tanzu Application Platform」をご紹介しました。VMware Tanzu Application Platformは新機能「VMware Tanzu Application Engine」が発表されるなど、VMware Tanzuファミリーの中でも非常に注目度の高いプロダクトです。

ネットワールドでは、VMware Tanzu Application Platformやその他VMware Tanzu製品をスムーズに導入・活用いただくために、お客様に合わせてヒアリングから各コンポーネントの導入、操作手順書の作成、トレーニングの実施、導入後のオフサイトサポートまでトータルに対応する「導入支援サービス」を提供しています。アプリケーションのモダン化をご検討の際は、ぜひネットワールドまでお問合せください。

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