本記事では、ストレージ仮想化市場におけるリーダー製品として評価の高い「VMware vSAN」の概要と、2022年のVMware Exploreで大幅アップデートが発表された「vSAN 8・vSAN ESA」情報についてご紹介します。
ハイパーコンバージドインフラ(HCI) とは?3層アーキテクチャとの違い
従来の仮想環境では、仮想マシンを動作させるために物理サーバ・ストレージ用のネットワーク・ストレージをそれぞれ用意し、別々に管理を行う「3層アーキテクチャ(3-Tier)」が主流でした。3層アーキテクチャではそれぞれのシステムが独立しているため、機器追加や設定変更に手間や時間がかかり、仮想化によって得られるスピードが失われてしまう課題がありました。
このような課題を解決するソリューションとして「ハイパー・コンバージド・インフラ(HCI:Hyper Converged Infrastructure) 」が登場しました。HCIではストレージ仮想化製品を活用して物理サーバ内にストレージ機能を持たせており、3層アーキテクチャの複雑性を排除し、同一の管理コンソールで仮想化環境全体を効率的な運用管理や迅速なシステム変更を行うことが可能です。
シンプルかつ高性能なVMware環境を実現!「VMware vSAN」とは?
VMware社が提供する「VMware vSAN」は、HCIをサポートするストレージ仮想化(SDS:Software Defined Storage)ソリューションです。
vSANはサーバ仮想化製品「VMware vSphere」と完全に統合されており、ハイパーバイザー内の分散レイヤーとして動作します。クラスタ内のサーバが持つストレージハードウェアを統合・プール化した「vSANデータストア」を作成し、vSphere環境の各仮想マシンにストレージリソースの割り当てを行います。
vSANを利用すると仮想環境に必要だった外部の共有ストレージは不要になり、仮想マシンに割り当てるストレージ管理の効率化や自動化、また外部ストレージ調達のコストダウンを図ることができます。
vSphereとの密な統合によって、HCIのパフォーマンスが向上
vSANとvSphereの組み合わせには、同じVMware製品同士ならではの優位性があります。vSphereカーネル内にvSANが組み込まれた一体型アーキテクチャであるため、HCI構成で避けられないストレージ仮想化によって発生するオーバーヘッドやホストのCPU使用率を最小限に抑えることができるという点です。
仮想マシンに対する高速なストレージ通信の提供はもちろん、リソースの有効活用によってvSphereサーバあたりの仮想マシン統合率を高めたり、両製品をvCenterで一元管理を行うといったメリットを享受することができます。
「vSAN HCI Mesh」の機能で、vSANクラスタのリソースを柔軟に有効活用
単一のvCenter 配下において、vSANを利用する「vSANクラスタ」と、vSANを利用しない「コンピュートクラスタ」が混在しているケースでは、vSANの「HCI Mesh」機能によってvSANクラスタの「vSANデータストア」をコンピュートクラスタに共有することができます。今までにない柔軟なインフラ構成が可能であり、vSANクラスタに発生している余剰リソースの活用や、仮想化基盤における拡張性を向上させます。
HCI Meshの利用にあたっては、vSAN クラスタに対しては「vSAN Enterprise」のライセンスが必要になります。vSANベースではないコンピュートクラスタでは、vSANライセンスは不要となります。
vSAN構成で利用できるストレージリソースについて (HDD/フラッシュ/NVMe)
求めるパフォーマンスやコスト感に合わせて、以下の種類のvSANクラスタを構成することができます。vSANサーバでは動作要件を満たすHDD(磁気ドライブ)やフラッシュデバイスが必要です。
vSANクラスタ | 特徴 |
---|---|
ハイブリッド vSAN クラスタ | キャッシュにフラッシュ、キャパシティにHDDを利用 |
オールフラッシュ vSAN クラスタ | 全てのデバイスでフラッシュを利用 |
vSAN Express Storage Architecture (vSAN ESA:vSAN 8の新機能) | 全てのデバイスでNVMeベースのフラッシュを利用 vSAN 8で利用可能になった最高パフォーマンス構成 |
VMware Explore 2022で発表された「vSAN ESA」とは?
vSAN 8 では、新しいアーキテクチャである「vSAN Express Storage Architecture(vSAN ESA)」が発表されました。vSAN ESA によってvSAN環境でのハードウェア選定がより自由になり、ユーザーに合わせた最適なアーキテクチャを選択することが可能になりました。具体的には、NVMe ベースのフラッシュのみでvSANクラスタを構成する選択肢が提供されました。
従来のvSANのストレージアーキテクチャである「vSAN Original Storage Architecture(vSAN OSA)」は、ストレージの高速化を担う「キャッシュ(SSD)」と、データ保存を担う「キャパシティ(HDD/SSD)」のハードウェアを組み合わせて「ディスクグループ」を構成します。vSANが初めて登場した当時の主流であったHDDに最適化し、非常に高価だったSSDを最大限に有効活用するように設計された2 層アーキテクチャであり、これによって幅広いストレージデバイスに対応したストレージ仮想化が可能になっています。
一方で現在のストレージハードウェアはフラッシュデバイスが普及しており、HDDではなくSSDやNVMe(Non-Volatile Memory Express) を活用した高速化が進んでいます。こうした時代の変化から、現在のストレージハードウェア状況に最適化された最新アーキテクチャとしてvSAN 8で「vSAN ESA」がリリースされました。
「vSAN ESA」ではディスクグループの考えが無くなり、NVMe ベースに最適化された単一層アーキテクチャによって高パフォーマンスを発揮するストレージアーキテクチャです。高速なブロック処理エンジンとオーバーヘッドが少ない書き込み技術が採用されており、より高速で効率的なストレージ仮想化を実現できます。vSAN ESAはキャッシュデバイスの排除によりストレージ効率が向上し、高度な圧縮アルゴリズムで最大4倍の圧縮が可能、パフォーマンスを犠牲にすることなく使用可能な容量を大きく増やすことができます。
また、高速化のメリットに加えて、ディスクグループを構成しないvSAN ESAでは障害ドメインが縮小しており、可用性の向上とSLAの改善を見込むことができます。
従来のアーキテクチャ
vSAN Original Storage Architecture
- キャッシュとキャパシティをそれぞれ用意
- 目的を分けたディスクグループを構成
- 幅広いストレージハードウェアをサポート
新しいアーキテクチャ
vSAN Express Storage Architecture
- 全ハードウェアを高速化および容量で使用
- シングルティアで柔軟なアーキテクチャ
- vSAN ESAで認定されたNVMeをサポート
「vSAN Original Storage Architecture(vSAN OSA)」の今後について
当面の間、vSAN OSAが無くなる計画はありません。vSANを導入するユーザーは従来どおりのvSAN OSAか、高性能なvSAN ESAを自由に選択することができます。
また、アーキテクチャの異なる「vSAN OSA」と「vSAN ESA」は、クラスタ内での混在はできません。
vSANの利用方法
vSANは、「VMware Cloud Foundation(VCF)」のサブスクリプションに含まれています。また、「VMware vSphere Foundation(VVF)」および「VMware Cloud Foundation(VCF)」に対して、大規模なデータセンターのニーズを考慮した「ストレージ容量(TiB)」単位でvSANのサブスクリプションをアドオンすることが可能です。
- 利用するディスクサイズ(Raw Capacity)1TiBにつき1ライセンス
- (計算式)1TB x 0.9095 = 1TiB
- vSANクラスタを構成するディスクサイズが対象になります。
- キャッシュはカウントしません。
- vSANクラスタの実効容量ではない点にご注意ください。
VMware vSANが提供する機能 | |
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ライセンスモデル | サブスクリプション |
購入単位 | TiB |
ストレージポリシーベースの管理 | |
分散仮想スイッチ | |
ソフトウェアチェックサム | |
オールフラッシュ構成 | |
iSCSI ターゲットサービス | |
QoS – IOPS の制限 | |
CNS コントロールプレーン | |
vSphere CSI ドライバー | |
共有 witness | |
重複排除/圧縮 (オールフラッシュのみ) | |
RAID-5/6 イレイジャーコーディング (オールフラッシュのみ) | |
vCenter 内の VMware Aria Operations | |
vSAN ストレッチクラスタ | |
保存データの暗号化 | |
ファイルサービス | |
Cross-Cluster Capacity Sharing ※1 | ※1 |
vSAN MAX |
※2Two-node clusters only. Stretched clusters with 3 or more hosts require vSAN ENT or ENT+ licensing.
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