「VMware Cloud on AWS」とは?今さら聞けないサービス概要
「VMware Cloud」のサービスとして、ヴイエムウェアとAmazon Web Services(AWS)が協業して2017年から提供しているVMware Cloud on AWS。サービスの成り立ち、これまでの沿革や構成要素、導入メリット、想定ユースケース、価格、利用手順、注意点などを整理します。
VMware Cloud on AWSとは何か、どんなメリットがあるのか?
VMware Cloud on AWSは、VMware環境をAWSに移行したり、VMware環境でオンプレミスとAWSを連携するハイブリッドクラウドを構築したりするためのソリューションです。
VMware環境を構築するためのソフトウェア一式をAWSのベアメタルサーバー上に構築し、顧客向けの占有環境として提供するクラウドサービスです。VMwareとAWSが共同で開発し、2017年からAWSの米国オレゴンリージョンで提供を開始、2018年11月からはAWSの東京リージョンで利用が可能になっています。
従来、オンプレミスのVMware環境をパブリッククラウドに移行しようとすると、仮想マシンの変換や移行作業、AWSなどのパブリッククラウドのノウハウを学習するなどの手間と時間がかかっていました。具体的には、VMware仮想マシンをAmazon EC2上で稼働させるための仮想マシンに変換し、システムやデータを移行して、AWSの操作体系を習得する必要がありました。
これに対し、VMware Cloud on AWSは、クラウド上の環境もVMware環境になるため、これまで培ってきたVMwareのスキルやノウハウをクラウド環境でも活用し、クラウド移行の手間と時間を最小限にすることができます。
VMware Cloud on AWSのコンポーネントやスペック
VMware Cloud on AWSは、AWSクラウド上にVMware SDDC(Software Defined Data Center)を構築し、VMware vCenter Serverで統合管理するソリューションです。VMware SDDCは、VMware vSphere、VMware vSAN、VMware NSXなどで構成されます。
VMware SDDCを稼働させるAWS上のEC2インスタンスは、i3.metalやi3en.metalインスタンス(ベアメタルサーバー)が利用されます。i3.metalインスタンスのスペックは、2ソケット(1ソケットあたり18コア)、512GiB RAM、15.2TB Raw SSDストレージです。
オンプレミス環境には、VMware vSphere 6.0以降が必要で、オンプレミス環境とVMware Cloud on AWS間で単一ペインでの統合管理を行う場合、VMware vSphere 6.5以降が必要です。
サービス開始当初はVMwareホストを最小4ノードで構成する必要がありましたが、2020年7月からは最小2ノードでの構成が可能になりました。SLAも従来と同等で、複数のAvailability Zone(AZ)にまたがるゼロデータロスの可用性を実現しています。
VMware Cloud on AWSのユースケース
VMware Cloud on AWSの主なユースケースは、「データセンターの拡張」「クラウドへの移行」「災害対策」「次世代アプリケーション」の構築などです。
データセンターの拡張
例えば、不足したストレージ容量をクラウドのストレージでまかなったり、サービスのピーク時にクラウドからコンピューティングリソースを調達したりすることが考えられます。
クラウドへの移行
仮想マシンを変換作業や業務停止を伴わずにクラウドへ移行することや、フルクラウド化に向けた段階的なシステム移行などに利用できます。具体的には、VMware Hybrid Cloud Extension(HCX)を用いて、ゼロダウンタイムマイグレーションやバルクマイグレーション、コールドマイグレーションなど柔軟な移行が可能になります。
災害対策
VMware Live Recovery(旧VCDR)などのソリューションを用いて、これまでより効率的に事業継続や災害対策を図ることができます。
次世代アプリケーション
AWSが提供するさまざまな機能やサービスを用いて、アプリケーションのモダナイゼーションや次世代アプリケーションの開発を推進することができます。
VMware Cloud on AWSの利用手順や注意点
VMware Cloud on AWSは、ソリューションプロバイダー経由か、マネージドサービスプロバイダー(MSP)経由で、購入することができます。
ソリューションプロバイダー経由の場合、VMware Cloud on AWSはそのまま再販するかたちとなり、サポート窓口はヴイエムウェアとなります。一方、MSP経由の場合、VMware Cloud on AWSは、MSPの独自サービスが付加され、サポート窓口もMSPパートナー経由となります。
利用料金は月額払いのオンデマンド形式か1年または3年契約前払いのサブスクリプション形式かを選択できます。利用料金には、VMware SDDCのライセンス費用(vSphere、vSAN、NSX)や、ハードウェア機器(ネットワークスイッチ、ラック、ケーブル)の保守費用、ソフトウェアのアップグレード費用などが含まれます。
初期導入コストは高額になりますが、ソフトウェアのメンテナンスはヴイエムウェアが担い、ハードウェアのメンテナンスはAWSが担うため、運用管理を踏まえたトータルコストで見積もることが重要になってきます。