ネットワールドSEが解説!VMware Cloud on AWSとAzure VMware Solution徹底比較
現在様々なクラウドベンダーがVMware社のVMware Cloud Foundationベースの「VMware Cloud」サービスを提供していますが、VMware SDDC as a Serviceがなぜ必要なのか。また、VMware Cloud on AWSの特徴とAzure VMware Solutionの特徴を元に、”ぶっちゃけ徹底比較”をネットワールドSE工藤が解説します!
ハイパースケーラでのVMware SDDC as a Serviceの提供
現在AWS、Azure、Google、IBM、Oracleの5社がVMware社のVMware Cloud Foundationベースのクラウドサービスを提供しています。こういったサービスというとVMware Cloud on AWS(VMC on AWS)が先駆者のイメージがありますが、実は後発でIBM社やOracle社の方が先行してサービスを提供していました。ハイパースケーラ各社は当然自社のIaaSサービスとして仮想マシン as a Serviceを提供しているわけですが、なぜVMware SDDC as a Serviceが必要なのでしょうか?
仮想マシンとしては移行可能でクラウドに移行するのだからIaaSサービスに移行すればいいという意見も当然一理ありますが、ただオンプレミスに多くある仮想基盤上で動作するシステムでは、システムの一部を変更することによるシステムの改修コストや運用の変更にかかるコストを考えると従来のシステムを何も考えずに移行した方が結果的に安いということがあります。
クラウド移行を引っ越しに例えると、部屋の家具が現在の部屋に合わせたオーダーメイドの壁面収納だらけで全部作り直しになってしまうとコストがかかるため、そのまま移行できる引っ越し先を検討しているというイメージです。
クラウドに移行する気はあるけど、システム自体をクラウドネイティブに移行するのはまだまだ先、こういったシステムを中途半端にクラウド移行することは同じシステムを車輪の再発明するようなものです。このような場合にはまずはそのままクラウドに持っていて、将来のクラウドネイティブに移行することを容易にすることが重要だと考えることが重要です。
VMware SDDC as a Service
ハイパースケーラ各社のベアメタルサーバ上にvSphere + NSX + vSAN + HCXが提供されるものです。基本的にどのハイパースケーラのサービスを選んでもこの基本構成は変わりません。vCenterやNSXの管理をどこのレイヤから利用者に提供しているのか、HCXの利用可能なエディションの違いなど細かなところで違いはありますが、動作する仮想マシンとしてはvSphereのバージョンに差はあるもののオンプレミスで動作している仮想マシンをそのまま移行することができるようになっています。注意点としてオンプレミスで利用していたvSphereやNSXのライセンスをそのまま持ち込むことはできません。
VMC on AWSの特徴とは?
VMC on AWSはAWS社のクラウドインフラを間借りしたVMware社のクラウドサービスです。そのためAWSのリソースに依存することなく、VMC on AWS単体でも動作するような設計になっています(AWSアカウント/VPCとの紐づけは必須です)。VMC on AWS以外のハイパースケーラのサービスと違い、VMware SDDC as a ServiceのコンポーネントであるNSXルータが外部ネットワークとの外接ルータとして機能することになります。
VMware Transit Connectを使ってVMwareマネージドのTransit Gatewayを使ってAWS内のネットワークや他のデータセンターとの接続をすることも可能です。VMware Transit ConnectはAWS Transit Gatewayベースのサービスですが、すべてのAWS Transit Gatewayの機能をサポートするわけではありません。
VMC on AWSが他社のサービスにはない特徴として、標準で提供されるHCX Advancedに一部HCX Enterpriseの機能が提供されていたり、vSphere,NSXの新機能が他社のサービスよりいち早く対応します。VMware Transit Connectで既存AWS Transit Gatewayとの接続がサポートされるようになりました。既存AWSリソースを生かした柔軟なネットワーク構成を実現することができます。
VMware Cloud on AWSの最新のアップデート(2021年10月)-VMware Japan Blog
また昨今のランサムウェア対策として、VMC on AWSの必要なときに新規のvSphere環境を利用できるメリットと連携するデータ復旧ソリューションVMware Live Cyber Recovery(旧称:VMware Cloud Disaster Recovery)などの関連サービスも充実しています。VMware Live Cyber Recoveryについては他のコンテンツで詳細を紹介していますので興味のある方は是非ご覧ください。
Azure VMware Solutionの特徴とは?
Azure VMware Solution(AVS)はVMware社のクラウドプロバイダー向けプログラムで提供されるソフトウェアを利用してAzureインフラ上で提供されるMicrosoft社が提供するサービスです。
Azure VMware Solution”s”と呼ばれていたサービスも以前提供されていました。Google社にCloud Simple社が買収されたことに起因して、Virtustream社が開発していたAzure VMware Solutionsをベースとして現在のAzure VMware Solutionが提供されるようになりました。
Azure VMware Solutionは単体ではインターネット接続こそ提供可能なものの、既存のAzureリソースやオンプレミスとの接続には必ず関連するAzureリソースが必要になります。Azure VMware Solution単体を知っていても全体の設計はできませんが、既存のAzureの知識や資産をそのまま利用することができるようになっています。管理自体もAzure管理ポータルから実施し、vSphereやNSXに関してはオンプレミス同様の管理を行うことができます。
Azure VMware Solutionでは、AzureのIaaSに移行した場合と同様にMicrosoftライセンスの持ち込みやレガシOSの延長サポートを利用することができるといったAzureならではのメリットを享受することができます。
VMC on AWS とAzure VMware Solutionってどっちがいいの?
ここまでVMC on AWSとAVSの特徴を解説してきましたが、値段もできることもそれほど大きな差はありません。既存のvSphereワークロードをそのまま移行して使い続けるためのプラットフォームとして他のハイパースケーラのサービスを含めて共通で言えることです。
ではどういった観点でハイパースケーラのVMware SDDC as a Serviceとして利用するのがいいのでしょうか?
では突然ですが問題です!
あなたは突然引っ越し先を探さなくてはいけなくなりました!!!
VMC on AWSは「AWS駅直結の仮想マシン向け住居をVMware社が開発・販売しているもの」になります。
AVSは「Azure駅直結の仮想マシン向け住居をMicrosoft社が開発・販売しているもの」になります。
提供される部屋の間取りも家賃もそれほど変わりません。皆様はどうやって引っ越し先を選びますか?ちょっと乱暴な例えかもしれませんが、実際こんな感じです。
この場合、多くの方が「AWS駅とAzure駅のどっちが自分にとって魅力のある駅なのか?」で引っ越し先を選ぶのではないでしょうか?よく使うお店がAWS駅の周りの方が多いから、数年後を考えて子育て支援の充実したAzure駅を選ぶなどです。
ハイパースケーラのVMware SDDC as a Serviceを選択する際に重要なのは、サービスの細かな機能差ではなくどのハイパースケーラーのクラウドサービスに移行するのか検討したうえで自社にとって最適な移行先を選んで頂けると幸いです。
ただし移行時、設計時の注意事項は、ハイパースケーラー各社のサービスによって異なりますのでご注意ください。
ネットワールドではVMC on AWSやAzure VMware Solutionへの移行をトータル支援する導入サービスを提供しております。またVMC on AWSと連携するVMware Live Cyber Recoveryの導入支援サービスも提供しています。どちらもご検討の際は、是非お気軽にネットワールドにご相談ください!!