「VMware Avi Load Balancer」で代表的な3つの活用シナリオ
「VMware Avi Load Balancer(以下、Avi Load Balancer)は、複雑化する今後のシステム環境において重要な役割を果たします。(旧称:VMware NSXシリーズのVMware NSX Advanced Load Balancer)
この記事では、「既存の物理ロードバランサーのリプレイス」「VMware Horizon環境での負荷分散」「マルチクラウド環境での活用」の3つの活用シナリオを紹介します。また、すべてのケースにおいて中核的な役割を演じるGlobal Server Load Balancing(GSLB:広域負荷分散)について解説します。
活用シナリオ1:既存の物理ロードバランサーのリプレイス
活用シナリオの1つめは、既存の物理ロードバランサーをリプレイスするパターンです。これにより、自動化によるコスト削減などが実現できます。
自社のデータセンターには通常多数の物理サーバーがあり、それぞれのサーバーで稼働するアプリケーションごとに物理ロードバランサーが割り当てられています。このままでは、アプリケーションごとに負荷のピークが存在することになり、管理を担当するエンジニアは処理のピークが発生するごとに手動でロードバランサーを設定するなど、非常に手間がかかります。
そこで、ロードバランサー/ADCをソフトウェア型であるAvi Load Balancerにリプレイスすることにより、オンプレミスにある複雑なシステム環境を、GUIを通じたコントローラーによって集中管理できるようになります。このコントローラーと、物理・仮想・コンテナなどのサービスエンジンが分離しているため、需要に応じてスケールアウトやスケールアップなどの伸縮を自在に実施できます。運用のおける多くの作業を自動化できるため、コスト削減を進められることもメリットです。
活用シナリオ2:VMware Horizon環境での負荷分散
活用シナリオの2つ目はVMware環境でのAvi Load Balancer導入です。具体的には、VDI(仮想デスクトップ)環境である「VMware Horizon」における負荷分散を想定しており、エンドユーザーの業務効率などにも大きな効果が見込めます。
VDI環境は、データの取り扱いや従業員の働き方など、企業や組織全体に大きな影響を与えるため、導入して終わりではなく運用こそが重要です。運用のポイントになるのは、アカウント管理、仮想環境のソフトウェア追加と更新、サーバーの負荷分散と調整の3つだと言われています。VDI環境では各従業員に必要なソフトウェアなどがサーバー側にあるため、接続できなくなれば業務に支障をきたします。また、環境の変化に応じた仮想環境のソフトウェア更新やサーバーの負荷分散が、安定した運用に必要であることは言うまでもありません。
結果として、メンテナンスコストの増加や柔軟な対応が難しいといった課題に直面するケースがあります。Avi Load Balancerによる環境全体の集中管理によって、こうした課題を解決することが期待できます。
活用シナリオ3:マルチクラウド環境での活用
活用シナリオの3つ目は、マルチクラウド環境での利用です。Avi Load Balancerをパブリッククラウドで活用することで、AWS、Azure、Google Cloud、Oracle、IBMなど複数のパブリッククラウドだけでなく、オンプレミス環境を移行済みのVMware Cloud on AWSを含めたマルチクラウド環境を一元管理できます。
通常、パブリッククラウドはそれぞれに管理ツールが提供されており、機能ごとに使い分ける必要がありますが、Avi Load Balancerを導入することでツール、機能、操作環境を一元化できます。
現在、多くの企業が実施しようとしているデジタルトランスフォーメーション(DX)は、優れた機能を持つパブリッククラウドを組み合わせたり、さらにVMware Cloud on AWSの登場により過去の資産として蓄積したオンプレミスもクラウド環境に載せられたりするようになっています。
こうした多様なクラウドが混在するマルチクラウド環境での一元管理を進めることによって、過去・現在・未来のシステムが本当の意味で融合できます。負荷分散装置としてのロードバランサー/ADCにも、マルチクラウドの一元管理機能が求められており、Avi Load Balancerはそれを実現できる次世代の製品だと言えます。
中核機能としてのGlobal Server Load Balancing(GSLB)
3つの活用シナリオを紹介しましたが、いずれのケースでも重要になるのが、グローバルに配置されたアプリケーションへの最適なアクセスを提供するサービスとしてのGlobal Server Load Balancing(GSLB)です。通常各所でのアプリケーションの負荷は、ローカルのロードバランサーで管理するのが一般的ですが、GSLBでは複数のデータセンターやパブリッククラウドなどに配置されたアプリケーションの負荷分散が可能です。
では、一般的なロードバランシングとGSLBはどのように違うのでしょうか。一般的なロードバランシングでは、下図のようにバランス先サーバーの状態監視を実施します。また、リクエストがあると活動している状態のサーバーに振り分けて、処理をバランスさせます。
一方のGSLBは、DNSを使って名前解決により最適なアクセス先のIPを取得する点が異なります。バランス先サーバーの状態を監視しながら、リクエストがあると活性状態のバランス先サーバーに処理を振り分けます。
過去、GSLBを利用される事業者はサービスプロバイダーや大企業に限られていました。しかし、デジタルトランスフォーメーション(DX)を見据え、過去の資産とコンテナなどを活用したモダンアプリケーションを積極的に取り入れる必要に迫られ、ハイブリッドクラウドやマルチクラウド環境が急速に普及し始めています。クラウドが複雑化することで、GSLBが強く求められ、重要性が高まっていると言えるでしょう。