自動化から見た「VMware Avi Load Balancer」~オートスケール~
「VMware Avi Load Balancer(以下、Avi Load Balancer)は、コンテナ、マルチクラウドなど変化し続けるアプリケーション環境の安定運用に欠かせない役割を果たす重要ソフトウエアです。(旧称:VMware NSXシリーズのVMware NSX Advanced Load Balancer)
ローバランシング、セキュリティ、情報収集と分析、プラットホームなど各分類でさまざまな重要機能を提供します。顕著に表れる効果は、急増するトラフィックに自動的に対応できるオートスケールや、新規で仮想サーバーを作成する場合の高速性です。
Avi Load Balancerと従来のロードバランサーの比較
Avi Load Balancerの特徴は、オンプレミスからパブリッククラウド、コンテナに至るまで、最新のアーキテクチャーを幅広くカバーすることで、デジタルトランスフォーメーション(DX)における柔軟性の高いアプリケーション開発を支援できることにあります。
異種混合の環境をソフトウエアで管理できるというメリットを最大限に生かすためのキーワードは「自動化」です。Avi Load Balancerであれば、仮想サービスに必要なパラメーターを定義し、実行することで、数分間で設定が完了することもあります。リソース確認から仮想IPアドレスの確認などを自動で実行できるからです。
今回は、トラフィック量に応じて自動でキャパシティーを増減させるオートスケールや、ADCインスタンス展開を自動化することによる効果など、NSX Advanced Load Balancerの機能的な優位性について解説します。
下表は、Avi Load Balancerと従来のロードバランサーとの比較です。
ここでは特に、キャパシティーの拡張に注目してみます。Avi Load Balancerの大きなポイントが、システム全体のロードバランシングを司令する「コントローラー」と、トラフィックを制御してデータ転送を担う「サービスエンジン(SE)」を分離したアーキテクチャーであること。その特徴は、トラフィック量に応じてサービスを自在にスケールさせるオートスケーリングの実装にもつながっていきます。
サービスエンジンのオートスケーリング
コントローラーとサービスエンジンを分離した分散アーキテクチャーを採用したことによって、より柔軟にトラフィック制御できるようになります。従来型では、リソースをシステム全体でプールできないため、ロードバランサー1台ごとのキャパシティーが処理の上限になってしまいました。そのため、アプリケーションごとに最大トラフィック量を予測し、インスタンスのサイジングをする必要がありました。
Avi Load Balancerでは、複数のサービスエンジンで同一の仮想IPによるサービスを提供できるので、最大値に合わせるコスト負担が不要になります。コントローラーは、各サービスエンジンの負荷を監視し、自動的に伸縮して必要なリソースを供給するオートスケーリングを展開します。これにより、通信トラフィックの負荷変動に応じて、自動的にキャパシティーを増減できるようになります。
Avi Load Balancerの優位性は、高いパフォーマンスに対応するために、スケールアップとスケールアウトの両アプローチを採ることができる点です。スケールアップでは1つのサービスエンジンのまま、1コアから8コア、16コアといったようにCPUを追加することで処理能力をアップさせます。一方、スケールアウトでは、トラフィックを制御し、データ転送を担うサービスエンジンを最大200まで増やせます。スケールアップとスケールアウトを組み合わせることで、より大規模なトラフィックに対応できるようになります。
サービス展開までの時間を大幅に短縮、機器・運用のコストも軽減
新規で仮想サーバーを作成したいという場合のインスタンス展開において、Avi Load Balancerは劇的な効果を発揮します。
新規で仮想サーバーを作成する場合に、従来型ロードバランサー/アプリケーションデリバリコントローラー(ADC)の場合は、必要なロードバランサーの保有状況を確認し、テストおよび本番環境の準備、要求するパフォーマンスとロードバランサーの余剰リソース確認、アプリケーション間の依存関係の有無をチェックするといった作業に数日間を充てることになります。さらに、仮想サービスのサイジング、利用するハードウエアの決定、ロードバランスの設定、ルーティング設定、認証設定、アラート定義、利用するアドレスの確保、スタンバイ機がある場合はこうした作業をもう一度実施しなければならず、これらに数週間を要することがあります。
Avi Load Balancerは、自社のデータセンターやパブリッククラウドなどさまざまな環境を横断し、こうした作業をソフトウエアベースで実施することで、大幅に改善します。「IDC The Business Value of Avi Vantage: A Study of Enterprises Using Next-Generation Application Delivery」の調査によると、ADCのサービス平均展開時間は、既存のADCでの9日間だったものが、Avi Load Balancerではわずか2時間に、97%も減少しています。
Avi Load Balancerを利用することで、コスト削減効果も期待できます。前述の資料によると、既存のロードバランサー/ADCとAvi Load Balancerの3年間のコストを比較したところ、既存のADCが100(機器コスト44/運用コスト48/トラブルシューとコスト8)に対して、Avi Load Balancerでは53(機器コスト22、運用コスト27、トラブルシュートコスト4)と、全体で47%の削減を達成しています。