Windows 10には仮想GPUが必須
VDI環境のゲストOSをWindows 10にバージョンアップするとユーザーの体感パフォーマンスが低下する場合があります。Windows 10はWindows 7と比べて、グラフィックリソースの使用率が約30%増加するのが原因です。その影響はWeb会議や動画再生、WebブラウジングやOfficeなどの業務アプリケーションにも及び、従来と同等のVDIスペックでは快適な操作性を提供することができません。この課題を仮想GPUが解決します。
VDI環境のWindows 10化で噴出する不満の声
2020年1月14日にWindows 7のサポートが終了し、これに伴いVDI(仮想デスクトップ)環境のゲストOSもWindows 10へのバージョンアップが進みました。ところが単純にOSを入れ替えただけにもかかわらず、業務現場のユーザーや情報システム部門の管理者からは次のような不満の声が聞こえてきます。
Windows 10にしたら、
「動画が重くてスムーズに動かなくなった。Webサイトで公開しようとしている広告アニメーションの動作確認ができない」
「ExcelやPDFファイルのスクロールが極端に遅くなり、生産性が落ちてしまった…」
「全ての動作がもっさりするようになった。仮想マシンに割り当てるCPUやメモリを増強しても効果が感じられない…。物理サーバー台数を大幅に増やして分散すればなんとか使えるが、満足する体感が得られない…」
実はWindows 10はWindows 7よりも高機能になったぶん、CPUにかかる処理負担が重くなっており、上記のようなパフォーマンスに関する問題が発生するのです。
なぜWindows 10のVDIは遅くなるのか
あるメーカーの調査では、Windows 10で特に増加したのはグラフィックス系の処理で、GPUの使用量はWindows 7と比べてOSで約1.3倍、WebブラウザやOfficeなどの業務アプリケーションで約2倍となっています。VDI環境で、このグラフィックス処理に最適なGPUがないと、CPUが変わり処理をすることになり、CPUに大きく負荷がかかってしまいます。
要するにWindows 7時代と同じスペックのVDIでは、ユーザーに快適な操作性を提供することができないということです。ホストサーバーのCPUリソースが限界を超えて高負荷になると画面や操作がフリーズしたり、仮想マシンがシャットダウンしたりするおそれがあり、従来と同等のパフォーマンスや安定性を確保するためには、各仮想マシンに割り当てるCPUコア数やメモリ容量などのリソースを2倍に増やす必要があります。
そうなると、仮にこれまで1台のホストサーバーに100台の仮想マシンを実装できていたとすれば、Windows 10へのバージョンアップ後は仮想マシンを50台しか実装できないことになります。したがってホストサーバーの台数をこれまでの2倍に増設しなければなりません。
これはサーバーの導入費用をはじめデータセンターのスペース費や電力費など大幅なコスト増を招くほか、運用管理にあたる情報システム部門の作業工数も増加してしまいます。
仮想GPUで課題を解決
Windows 10に移行したVDI環境に発生したパフォーマンス問題を、NVIDIAが提供している仮想GPUソリューション「NVIDIA vGPU」が解決します。
「NVIDIA vGPU」はホストサーバーに搭載したGPUのメモリを仮想的に分割、複数台の仮想マシンで高いコア性能を効率的に利用することができます。
これによりグラフィックスの画面描画や画像データ変換と圧縮などの処理をGPUにオフロードすることが可能となり、CPU負荷を約20~60%削減し、Windows 10の操作感(体感パフォーマンス)を平均で34%向上することができます。
こうしたGPUとCPUの役割分担は、ZoomやMicrosoft Teamsなどを用いたWeb会議、動画ストリーミングによるウェビナーの聴講やe-ラーニングの受講、WebページやGoogleマップなどのブラウジング、ExcelやWord、PowerPointなどOfficeソフトにおける文字入力、資料やグラフ表示、PDF閲覧など、様々な業務アプリケーションの操作を快適にするという効果を発揮し、ユーザーの生産性を向上します。
ホストサーバー1台辺りのVDI数を改善
そして何よりも大きな仮想GPUのメリットは、増設しなければならないホストサーバーの台数を抑えられることです。
前述したとおり、仮想GPUなしでVDI環境のゲストOSをWindows 10にバージョンアップした場合、これまでどおりのパフォーマンスを確保するためにホストサーバーの台数を従来の約2倍に増やさなくてはなりません。これに対して仮想GPUを導入した場合、1ホストサーバー辺りのVDI数を50VM→96VMに改善することができるのです。
仮にWindows 7時代に3,000台の仮想マシンを30台のホストサーバーで運用していたとすると、仮想GPUなしでは60台のホストサーバーでの運用が必要となりますが、仮想GPUを導入すればホストサーバーは32台ですむことになります。
増設しなければならないホストサーバーの台数を47%削減することができるのです。
こうして増設しなければならなかったホストサーバーの台数を削減することで浮いた予算により、新規で導入するGPUと仮想GPUソフトウェアのコストも十分に賄うことが可能です。GPUは高価というイメージがあるかもしれませんが、このように考えれば決して高い買い物ではありません。
今後もWindows 10はアップデートを重ねるたびに機能強化が進んでいき、グラフィックスに対するニーズもさらに高まっていくことが予想されます。そうした将来に向けてVDIの快適なパフォーマンスと安定性を維持していくという観点からも、できるだけ早期に仮想GPUを導入しておくことが得策と言えます。