3分でわかる「Azure Virtual Desktop(AVD)」とは
近年急速に普及した働き方の変化に伴い、VDIやクラウド基盤からVDIを提供するDaaSを採用する企業が増えており、ニーズに応えるようにさまざまな企業がVDIやDaaSソリューションを提供しています。Microsoftのクラウドサービスである「Microsoft Azure」を基盤とするVDIソリューションに限っても、計3つのソリューションが提供されています。ここでは、「Azure Virtual Desktop(AVD)」「Citrix Cloud」「VMware Horizon Cloud on Microsoft Azure」を取り上げ、アップデート状況や導入するメリットを紹介しましょう。
Microsoft Azure上で利用できる2種類のDaaS
AVDは、Azureのネイティブサービスとして提供されているDaaSです。Microsoft Azureの基盤はもちろん、仮想デスクトップ用のコントロールプレーンもMicrosoftが管理するため、ユーザーが運用管理に割く負担を軽減させられます。また、「Windows 10マルチセッション」サービスを利用できる点も大きな特徴と言えるでしょう。同サービスは、1台のPCに複数のユーザーがアクセスして、それぞれのアカウントで仮想デスクトップのWindows10を利用できる仕組みになっています。
一方Citrix Cloudは、シトリックスが蓄積したノウハウを生かして実装したコントロールプレーンを使って、Microsoft Azure上のWindows仮想デスクトップを利用するDaaSです。オンプレミス環境で利用していたシトリックスのVDIソリューションの管理機能をMicrosoft Azure上で展開し、Citrixのマネージドサービスとして利用できるというメリットがあります。
「Windows 10マルチセッション」で1台のVMに複数ユーザーでのアクセスが可能
Windows 10マルチセッション機能は、Microsoft Azure上でVDIやDaaSを利用する際、また各社のサービスを比較する際の大きなポイントとなるでしょう。
従来では、一台のWindows仮想マシンに複数のユーザーがアクセスするには、Windows Serverを用いたRDS(Remote Desktop Services)によるマルチセッションを使うしかありませんでした。しかし、Windows 10マルチセッションの利用によって、Windows向けに開発されたクライアントアプリケーションを、Windows Serverではなく、Windows 10上で活用できるようになります。
同サービスを利用するメリットは、Windows 10向けに作られた業務アプリケーションとの互換性に関する課題を解消できる点です。また、複数のユーザーが一台のWindowsリソースを共有するため、従来のWindows Serverを使ったRDSのように、リソースの統合を図ることも可能です。
なおCitrix Cloudにおいても、Windows10マルチセッションの利用は可能です。Microsoft Azure以外のコントロールプレーンでも利用できるため、Citrix CloudからでもWindows10マルチセッションが管理可能になるのです。また、Windows Serverのマルチセッションを利用しており、Windows ServerのRDSクライアントアクセスライセンス(CAL)をすでに所持していれば、該当するライセンスを活用できます。
AVDの注目アップデート、ネットワーク最適化とインプレースシステムアップグレード
ここではAVDの最新アップデートの内、昨今の働き方の変化に対応した機能をいくつか紹介しましょう。
まずは、Microsoft Teams利用時の最適化です。Microsoft Teamsはリモートワーク下でWeb会議やチャットを実施でき、いまやビジネスに欠かせないツールとなりました。AVDでMicrosoft Teamsを利用すると、ネットワークが自動的に最適化されるため、これまでよりも快適に機能を利用できるようになったのです。
従来では、AVD上で複数のユーザーがMicrosoft Teams上でコミュニケーションをとる場合、映像や音声の処理も含めたネットワークトラフィックがAVD上のWindowsを経由していました。そのため、多くのマルチホップコネクションが発生し、結果としてネットワークの遅延が生じやすくなっていたのです。
ネットワークを最適化した後は、映像や音声の処理に関するトラフィックがローカルPCのリソースを経由するため、AVDを利用していない状態と同様にWeb会議をスムーズに進行させられます。また、Microsoft Teamsだけでなくプラグインを利用することで、Zoomのネットワークアクセスも最適化できるようになりました。
運用管理の上で重要となるアップデートの一つが、Windows 10 Feature Updateの適用サポートを受けられることです。これまでは、AVD上でWindows 10 Feature Updateを適用する場合は、Hyper-V環境で作り直したイメージをアップグレードするなどの手間がかかっていました。しかし、インプレースでのシステムアップグレードが可能になったことで、システムを最新のバージョンに刷新できるようになったのです。
このほかではクラウドベースの印刷ソリューションである「ユニバーサル プリント」機能が正式にリリースされ、プリンタサーバもクラウド化できるようになりました。
Citrix Cloudの注目アップデート、「Citrix Cloud Japan」と「CVAD for Azure」
Citrix Cloudにおけるアップデートとしては、2020年12月からリリースされる「Citrix Cloud Japan」が挙げられます。同サービスでは、グローバルで展開中のCitrix Cloudと同様のサービスを日本独自のものとして提供しています。
グローバルサービスの「日本リージョン」ではなく、完全に独立したサービスであることが特徴であり、顧客データは日本国内に留めることをポリシーとしています。また、国内で運営されるため、国外で問題が発生しても、Citrix Cloud Japanはその影響を受けにくいという特徴があります。また、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)への準拠も予定している点も特徴的です。
一方で、Citrix Cloud Japanは独立したサービスであるため、Citrix Cloudでは実装しているサービスや機能が提供されていないケースがあり、機能のアップデート状況やロードマップに注意しながら利用しなければなりません。
さらに、Citrix CloudのMicrosoft Azureに特化した新しいライセンス「Citrix Virtual Apps and Desktops Standard(CVAD) for Azure」も登場しました。Microsoft Azure専用のCVAD サービスとしてより安価に利用できる点、シンプルなコンソールでセットアップに時間がかからない点が特徴です。イメージ管理やセキュリティ機能は通常のCVADと同等ですが、管理権限の委任や設定のロギング、細かなモニタリングなど、利用できる機能には制限があるため、利用にあたっては注意しましょう。
VMware Horizon Cloud on Microsoft Azureのアップデート情報は?
Microsoft Azureを基盤とする点で、上述した2つのソリューションと類似しているのが、VMwareのVDIソリューション「VMware Horizon Cloud on Microsoft Azure(以下、Horizon Cloud)」です。Horizon Cloudにもアップデートはなされており、2019年には待望のWindows10マルチセッション機能が搭載されました。前述したように、同機能は利便性の高さから非常にニーズの高いものです。
また、次に割り当てを変更できるエージェントのアップデートも行われました。これにより、ユーザーが利用可能な仮想マシンの割り当て比率を変更したり、仮想マシンのアップデートをスキップ・もしくは再試行するか選べたり、各マシンのロールバックコピーを保持したりするなど、非常に使い勝手がよくなったのです。
これまで紹介してきた2つのソリューションに合わせて、Horizon Cloudは、今後もさらにUXの向上に努めていくでしょう。アップデート情報をチェックして自社にとって最適な環境を作りたいものです。