VMware vSphere Foundation(VVF)は、仮想化基盤の中心的な役割を果たすvSphere上で、コンテナワークロードを効率的に運用するための「vSphere Kubernetes Service」を提供します。本記事では、ネットワールドのVMware担当エンジニア・殿貝が、vSphere Kubernetes Serviceがもたらす具体的なメリットや活用事例について詳しく解説します。
vSphere Kubernetes Service(VKS)の概要
松本:
今回は、「VMware vSphere Foundation(以下VVF)」に含まれる「vSphere Kubernetes Service(以下VKS)」の担当エンジニアである殿貝さんにお話を伺いたいと思います。VKSにはどのような特徴があるのでしょうか?
殿貝:
VKS(旧称:Tanzu Kubernetes Grid service、vSphere with TanzuTKG)の最大の特徴は、既存のvSphere環境をそのまま活用しつつ、短期間でKubernetesクラスタを構築できる点です。ゼロから新しいインフラを構築する必要がないため、導入にかかる時間やコストを大幅に削減できます。また、既存の運用モデルやvSphereのスキルセットをそのまま活かせるため、新しいツールのKubernetesの基盤構成をき学習する手間が省けるのも大きな利点です。
VKSは、スーパーバイザークラスタ、Supervisor Control Plane VM VMIaaSコントロールプレーン、Tanzu Kubernetesクラスタといった主要なコンポーネントで構成されており、これらが連携することで、vSphere上でのKubernetes基盤が成り立っています。 構成仮想化基盤とKubernetesの運用が効率化されます。

図:VKSの概要
松本:
vSphere環境とKubernetesクラスタを並列に運用できるということですが、それを実現する具体的な仕組みについて教えていただけますか?
殿貝:
vSphere7.0からワークロード管理という機能が追加されました。この機能を有効化することで、vSphere環境上でKubernetesを利用することが可能になります。具体的にはSupervisor Control Plane VMと呼ばれる管理VMがデプロイされ、ESXiにKubernetes基盤を構成するコンポーネントがインストールされます。この状態になったvSphere ClusterをSupervisor Clusterと呼んでいます。ワークロード管理を有効化することで、VKS専用リソースプールが作成されますので、仮想マシンvSphere環境とKubernetes基盤が視覚的にも分離された形で運用が可能になります。
Tanzu Kubernetesクラスタをデプロイしますと、専用リソースプール内に配置される形になりますので、どこに何台のTanzu Kubernetesクラスタがデプロイされているのか等の情報はvSphere Clientから確認することができます。Cl など されている され Ta される Kubernete でを Kubernetes Ku Suされ、 Kuber を という と 管理
スーパーバイザークラスタは、Kubernetes APIを介してvSphereリソースを直接管理できるようにすることで、仮想化基盤とKubernetesの統合を実現します。たとえば、vSphere Podとしてコンテナを仮想化環境内で直接稼働させることができるため、仮想マシンと同じようにKubernetesワークロードを扱えます。
一方、Tanzu Kubernetesクラスタは、Kubernetesクラスタの構築や運用を自動化するツール群を提供します。管理者は煩雑な設定作業をせずにクラスタを効率的にデプロイでき、スケールアウトも簡単に行えます。また、IaaSコントロールプレーンは、vSphere全体のリソースを統括し、プロビジョニングや監視、スケーリングといった基本機能を提供することで、運用管理を効率化します。
さらに、ネットワーク面では、AviロードバランサーやNSXとのシームレスな連携により、Kubernetesクラスタやそのワークロード間の接続が効率化されています。ストレージ面ではvSANとの緊密な統合に加え、外部ストレージとの柔軟な連携も可能であり、さまざまな運用ニーズに対応できる柔軟性と拡張性を備えています。

図:VKSの管理画面

図:VKSのアーキテクチャ
松本:
vSphere Clientから確認が出来て、 出来て でインフラ管理者から見ても管理しやすそうですね。ネットワークやストレージの扱いはどのようになっているのでしょうか。 ストレージす しやす
殿貝:
ネットワーク面では、別途AviロードバランサーもしくはNSXを利用します。Kubernetesを構成するネットワークはそれらのネットワーク製品がvSphereと連携し、自動で作成してくれますので、Tanzu Kubernetesユーザー側で複雑なネットワーク設定は必要ありません。ストレージ面では、データストアを利用する形になるため、vSANはもちろんのこと、外部ストレージの利用も可能になっています。にいます。 になっており ストレージ がvSANは もちろんのことなく、 ロードバランサー
松本:
これほどの要素が統合されているのですね。一方で、オープンソースのKubernetesも注目されていますが、それと比べてVKSの優位性はどのような点にあるのでしょうか?
殿貝:
オープンソースのKubernetesは、柔軟性が高く多様な構成が可能ですが、その一方で、導入時にネットワークやストレージの設計を一から行う必要があるため、学習コストが非常に高いという課題があります。特に初めてKubernetesを導入する企業にとっては、この負担が大きなハードルとなる場合が多いです。
一方で、VKSはvSphere環境に統合されており、ネットワークやストレージの設定が事前に整備されているため、専門知識がなくてもスムーズに運用を開始できます。さらに、オンプレミス環境でのKubernetes活用が可能となるため、自社でのデータ管理の柔軟性といった点でも大きな優位性を持っています。
管理性からみたVKSのメリット
松本:
vSphere Clientを通して管理できることをもう少し詳しく教えてください深堀したいです。で、VKSには具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
殿貝:
VKSの大きな利点の一つは、リソースの利用状況を直感的に把握できるようになる点です。従来の環境では、仮想マシンとKubernetesクラスタが混在している場合、それぞれのリソースがどの用途に使われているかを明確に整理するのが難しいことがありました。VKSでは、リソースプールやvSphere Namespaceネームスペースといった仕組みを活用することで、用途別にリソースを整理し、「誰がどのリソースを使っているのか」をひと目で確認できるようになります。この視認性の向上は、管理業務の効率化に直結します。
また、VKSはvSphereクライアント上のGUIを通じてKubernetesクラスタが可視化されるためを管理できるため、CLI操作に不慣れな管理者でもスムーズに運用を開始できます。権限管理も柔軟で、チームや個人単位でアクセス権を細かく設定できるため、セキュリティ面でも安心して運用を進められる環境が整っています。インフラ管理者はvSphere主体でに管理・運用し、開発者はvSphereを意識せず 意識せず直接Kubernetesクラスタにアクセスすることが可能になります。できるで

図:VKSのアーキテクチャ

図:VKSの管理画面
松本:
リソースの可視化が進むことで、作業環境全体を把握しやすくなりそうですね。特に、Kubernetesに不慣れな方でも慣れ親しんだUIを使えるのは心強いです。では、vSphereに備わっている各種機能については、VKSでも同じように活用できるのでしょうか?
殿貝:
VKSでは、vSphereのDRS(Distributed Resource Scheduler)やHA(High Availability)といった既存の信頼性の高い機能を活用することを前提としています。これらの機能が統合されていることで、システム全体の安定性を確保しつつ、Kubernetesクラスタの運用がより効率的かつスムーズになります。
また、Supervisor Control Plane VMやTanzu Kubernetesクラスタのノードは にvSphereのスナップショット機能をそのまま活用することはできませんが、Kubernetes独自の機能である「セルフヒーリング セルフヒーリング せるふ自己修復機能」が適用されます その役割を補完しています。このセルフヒーリング自己修復機能は、Kubernetesの「あるべき姿を維持する」という思想に基づいて設計されています。たとえば、コントロールプレーンが3台構成されている場合、1台がダウンしても即座に復旧プロセスが開始されます。このプロセスは完全に自動化されており、スナップショットを用いた手動復元に比べて、迅速かつ効率的です。
オンプレミスを活用できるVKSの優位性
松本:
実際に企業がVKSを導入する際、どのような課題を解決するために採用を決定しているのでしょうか?背景となる具体的な理由や状況を教えていただけますか?
殿貝:
VKSが選ばれる理由として「オンプレミス対応」の特性があります。セキュリティ要件の関係で、データをパブリッククラウドに保存することが難しいケースでは、既存のvSphereインフラをそのまま活用しながら、Kubernetesクラスタを効率的に導入できるVKSは、非常に魅力的な選択肢となります。
松本:
オンプレミスでKubernetesを利用できるという点は非常に魅力的ですね。それに加えて、Kubernetesに関する学習コストの低さも、導入を後押しする大きな要因ではないでしょうか?
殿貝:
その通りです。通常、Kubernetesの運用をゼロから始めるには、ネットワークやストレージの設計を一から構築し、さらに管理ツールの使い方を学ぶ必要があり、多くの時間と労力を要するのが現実です。VKSでは既存の仮想化基盤の知識やスキルをそのまま活かすことができるため、Kubernetesを初めて導入する企業でも安心してチャレンジできる環境が整っています。
この利便性は、特にリソースが限られているチームや、時間的な制約があるプロジェクトを進めている企業にとって大きなメリットです。新しい技術を迅速に取り入れ、運用に移行できることは、VKSを選択する上で非常に魅力的な要因となっています。
VKSがもたらすKubernetes活用の展望
松本:
最後に、今後Kubernetesやコンテナ技術、そしてVKSはどのような方向性で進化していくとお考えでしょうか?
殿貝:
Kubernetesやコンテナ技術の重要性は今後さらに高まると考えています。ただ、多くの企業にとってゼロからKubernetes環境を構築することは、依然として大きなハードルです。その点、VKSは既存のVMwarevSphere環境とKubernetesをシームレスに統合できる点が大きな強みであり、導入を検討する企業は増えていくと見ています。
特に、VMware vSphere Foundation(VVF)にVKSが含まれていることは、企業にとって大きな意味を持ちます。単なる仮想化基盤にとどまらず、その上でKubernetesをスムーズに導入できる環境が提供されていることで、Kubernetes初心者であっても、「まずは試してみたい」という段階から、無理なく運用に移行することができます。
VKSによってKubernetes導入のハードルが下がることで、新たな業務プロセスの最適化や、AIやIoT分野でのデータ管理の高度化といった、次世代のサービスやビジネスモデルの発展にもつながることを期待しています。
松本:
既存のインフラを活用しながら新しい技術に取り組むという選択肢が増えるのは、企業にとって非常に心強いですね。これからKubernetesの導入を検討している企業にとっても、大きな助けとなるソリューションだと感じます。本日は非常に興味深いお話をありがとうございました。
おわりに
今回は、VMware vSphere Foundation(VVF)に含まれる「vSphere Kubernetes Service(VKS)」の特長やメリット、具体的な活用方法について解説しました。次回のVol.3では、VMwarevSphere環境の運用管理を効率化するVCF Operations(旧Aria Operations)について解説します。
VVFやVMware Cloud Foundation(VCF)に関するご相談は、ネットワールドまでお気軽にご相談ください!が含まれており、Kubernetes活用を強力に支援する仮想化ソリューションです。
