効率的なDRを実現する「VMware Live Cyber Recovery」とは?

効率的なDRを実現する「VMware Live Cyber Recovery」とは?

従来の災害対策ソリューションは、本番サイトの他にリカバリサイトとしてデータセンターにインフラ設備を用意し、レプリケーション機能を利用してオンプレミスのデータを転送していました。VMware Cloud on AWSを活用したDRaaS として提供される「VMware Live Recovery」で利用可能な「VMware Live Cyber Recovery」(旧称:VMware Cloud Disaster Recovery(VCDR))を使うことで、データセンターにインフラ設備を準備しておく必要がなくなり、従来と比べて大幅にコストを削減できます。

目次

VMware Live Cyber Recovery(旧VCDR)とは?

VMware Cloud on AWSでは、ハイブリッドクラウド環境の利点を最大限に活用した効率的な災害対策(DR)ソリューションを利用できます。代表的なDRソリューションが、ヴイエムウェアから提供されている「VMware Live Cyber Recovery」です。

VMware Cloud」のサービスである「VMware Live Cyber Recovery」は、VMware Cloud on AWSに特化したDRaaS(DR as a Service)ソリューションです。リカバリサイトにVMware Cloud on AWSのSDDCを設定することで、クラウドストレージへのレプリケーション、クラウド環境でのフェイルオーバー、従量課金によるコスト最適化などが可能になります。リカバリサイトをあらかじめ構築しておく必要がなく、必要なときにオンデマンドで構築できることが大きな特徴です。

コンポーネントとしては、クラウドサービスとして提供されるオーケストレーターと、スケールアウト型のファイルシステムで構成されます。これらクラウドサービスが、オンプレミスのvSphereで構築されたデータセンターをコネクターによって接続し、レプリケーションしたシステムやデータをVMware Cloud on AWSをライブマウントしSDDCクラスターに展開します。

コネクターは、バックアップのための仮想アプライアンスに相当し、そこで吸い上げたデータをクラウドサービスに保存します。ライブマウントは仮想マシンをフルリストアするのではなく、ストレージとしてアクセスして仮想マシンを直接起動する仕組みです。

VMware Live Cyber Recoveryの概念図

これまでのDRも課題と、VMware Live Cyber Recoveryの3つのメリット

まず、従来のDRソリューションの課題を確認しましょう。従来のDRソリューションの選択肢は、データだけを遠隔地保存するタイプや、パブリッククラウドと連携するタイプ、オンプレミス同士で実施するタイプがありました。

データだけを遠隔地保存するタイプでは、復旧時間が長期化したり、復旧テストがしにくいことが課題でした。また、パブリッククラウドと連携するタイプでは、プラットフォームの違いによって運用が煩雑になったり、IaaSの制限により機能が不足したりしていました。オンプレミス同士で実施するタイプの場合、リカバリサイトのコストが保護対象のサイトとほぼ同額になり、リカバリサイトの運用・メンテナンスも必要でした。

すなわち、これまでソリューションは、「設備と運用のコスト負担が大きい」「オペレーションが複雑で復旧に時間を要する」「信頼性が低い」ことが課題となっていました。

これらの課題を解決し、「大規模な設備投資が不要」「属人化とヒューマンエラーの回避」「安全で確実な災害対策の実施」という3つのメリットを提供するのが、VMware Live Cyber Recoveryです。

これまでのDRの課題

メリット1:大規模な設備投資が不要

VMware Live Cyber Recoveryの1つ目のメリットである「大規模な設備投資が不要」では、クラウドのメリット(従量課金/オンデマンド)を最大限に活かしてコストを最適化することができます。

リカバリサイトは常設不要で、VMware Cloud on AWSにより、フェイルオーバー実行と同時にリカバリサイトの展開が可能です。より短いRTOを求める場合はリカバリサイトの事前展開も可能です。また、必要時だけリカバリサイトを展開できるので、従来ソリューションと比べて大幅なコスト削減を実現できます。利用量に応じた従量課金によって、大規模な設備投資を回避できます。

オンデマンドデプロイと事前デプロイ

メリット2:属人化とヒューマンエラーの回避

2つ目のメリットである「属人化とヒューマンエラーの回避」では、DRプランを事前に定義しておくことにより、有事のオペレーションを極小化できます。具体的には、保護サイトやリカバリサイト、リソースなどの構成を事前に定義してリカバリープランを作成しておくことで、有事の際にはリカバリープランを実行するだけで操作が完了します。また、オペレーションの定型化により属人化を回避することや、シンプルなオペレーションによりヒューマンエラーを削減することが可能です。

DRプランを事前に定義し運用の属人化とヒューマンエラーを回避

メリット3:安全で確実な災害対策の実施

3つ目のメリットである「安全で確実な災害対策の実施」では、フェイルオーバーの信頼性を高める機能によって、確実にビジネスを継続させることができます。

具体的には、コンプライアンスチェック、フェイルオーバーテスト、レポート機能などがあります。コンプライアンスチェックでは、保護サイトやリカバリサイトの環境、DRプランなどを検査し、異常や構成変更があれば管理者へ通知します。フェイルオーバーテストでは、本番同等のテストを実行したり、ライブマウントでのテストを行うことで、災害対策訓練を実現します。レポート機能は、コンプライアンスチェックやフェイルオーバーなどの処理を記録し PDF形式にて出力することで、監査記録として活用できるようにします。

このように、VMware Live Cyber Recoveryは、VMware vSphereで稼働している環境の災害対策を、より効率的に実施できるようになります。

より確実な災害対策の実施例
目次