従来の物理型ロードバランサーが抱える4つの課題とは?

従来の物理型ロードバランサーが抱える4つの課題とは?

前回のコラムでは、ロードバランサーから進化を続けるアプリケーションデリバリコントローラー(ADC)の重要性を紹介しました。今回は、デジタルトランスフォーメーション(DX)が求められ、マイクロサービス型のアプリケーション開発や、マルチクラウドなどIT環境が日に日に変化する中、既存のロードバランサー/ADCが抱える課題について整理し、解決方法をご紹介します。

目次

従来型ロードバランサーの課題

ウェブサイトに求められる要件が変化している中、それに対応するためにロードバランサーやアプリケーションデリバリコントローラー(ADC)に注目が集まっています。しかし、従来型のロードバランサー/ADCには、専用ハードウェアが必要、個別のデバイス管理、マニュアルオペレーション、個別のデバイス管理、手動でのキャパシティ管理といった課題もあります。

時代に取り残されつつある従来のロードバランサー/ADC
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キャパシティ管理の難しさ

従来のハードウェア型のロードバランサーの課題の1つが、キャパシティ管理の難しさです。ウェブサイトなどの停止は絶対に避けたいことなので、多くの場合はサーバーへの負荷がピークに達する水準に合わせた対応サイズを選択しています。通常は200Mバイトしか使わなくても、ピークが2Gであれば2Gの製品を購入するわけです。そうすると、ピーク時以外の多くの期間は、購入したサーバーが稼働しないことになるため、余剰リソースが存在する「過剰なIT投資」となってしまいます。

従来型の専用ハードウェアのロードバランサーは、アプリケーションごとに別々に負荷分散する仕様になっています。全体として余剰リソースがあっても、他のアプリケーションに転用するといった柔軟な対応ができません。

リソースが分断されキャパシティ管理が難しい
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管理ポイントの分散

2つめの課題は、集中管理ができないため1台1台を個別に管理する必要があることです。規模の大きなシステムになればなるほど、大量の管理箇所が発生します。これが管理者にとって大きな運用負荷となってしまいます。

また、運用管理の自動化が難しくなったり、環境のアップグレードに手間がかかったりといったデメリットにもつながります。また冗長構成としてActiveかStandbyの形式しか選べないこともデメリットです。

集中管理ができず管理ポイントが分散
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ハイブリッド/マルチクラウド環境に適用できない

ハードウェア型のロードバランサーが個別アプリケーションごとの管理にとどまってしまうことは前述のとおりです。ロードバランサーには、パブリックラウド型もでてきましたが、対象にできるのは各クラウドサービス内だけに限定されてしまいます。

したがって、こうした従来型のロードバランサーでは、オンプレミスや複数のクラウドサービスなどをまたいだ運用はできません。また、物理型ロードバランサーの仮想版をパブリッククラウド上で稼働させることは可能ですが、本来、物理環境での使用を念頭に置いているため、仮想環境では柔軟性や自動化が十分に発揮できません。

結果として、従来型のロードバランサーでは、オンプレミス、パブリッククラウド、マルチクラウド、コンテナなど、さまざまなシステムが混在するようになっている今日のIT環境には適合できなくなっています。

さらに、ハードウェア型の場合は、発注から納品までにリードタイムがかかるため、負荷分散機能が必要なタイミングに間に合わないといった事態も現実として考えられます。

リードタイムに見る従来型ロードバランサーの効率の悪さ

ここで、新規で仮想サーバーを作成するときに、従来型ロードバランサーを利用するときのシステム設計にかかるリードタイムをイメージしてみましょう。

まずは必要なロードバランサーの保有状況を確認し、テストおよび本番環境の準備、要求するパフォーマンスとロードバランサーの余剰リソース確認、アプリケーション間の依存関係の有無をチェックするといった作業に数日間を充てることになります。

さらに、仮想サービスのサイジング、利用するハードウェアの決定、ロードバランスの設定、ローティング設定、認証設定、アラート定義、利用するアドレスの確保、スタンバイ機がある場合はこうした作業をもう一度実施する。これらに数週間を要することがあります。

1つの仮想サーバーを作成するのにこれだけの時間を要しては、スピードが重視されるこれからのビジネスでの競争力拡大はおぼつかないでしょう。

「VMware NSX Advanced Load Balancer」による解決策

すばらしいビジネスアイデアをいかにサービスとしてアプリケーションに落とし込めるかが勝負を分ける時代になっています。従来型のロードバランサーでは手間、スピードなどさまざまな観点から、勝ち残るビジネスを生み出すことはできないと言えるでしょう。

解決策として、例えば「VMware NSX」を提供している VMware社は「VMware NSX Advanced Load Balancer」の提供を2019年に開始しています。NSX Advanced Load Balancer はもともと、VMwareが2019年6月に買収意向を表明したAvi Networksが提供するソフトウェアです。

Avi Networksは、クラウドとオンプレミスの全域にわたり最適な負荷分散ができるソフトウェアを提供していました。ロケーションやニーズに応じてリソース要求を均衡化するだけでなく、要求の背後にあるデータを考慮できるという意味でモダンな製品として知られていました。

対前年比成長率2倍以上、特許は出願中を含めて50以上に及び、フォーチュン500の10%、フォーチュン50の20%の企業が既に顧客として導入するなど、既に多くのユーザーが注目しています。

VMware製品となってから、VMware製品(vSphere等)との連携も可能になり、さらなる成長を遂げています。

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