〈VMware × Microsoft × Citrix〉テレワークで注目を集めるAzure VDI 三大ソリューションの概要

〈VMware × Microsoft × Citrix〉テレワークで注目を集めるAzure VDI 三大ソリューションの概要

働き方の変化に伴い、いかに安全性を担保して業務を進め、効率化するかが企業における喫緊の課題となっています。本記事では、近年注目されている「Azure VDI」に含まれる三つのソリューションについて紹介します。VDIに興味を持っている、適切なソリューションを探している企業は、本記事でまずVDIにおける基本的な知識を把握しましょう。

目次

浸透しつつあるVDIソリューションとDaaSの違い

テレワークやリモートワークが新しい働き方として定着しつつある中、社外から安全に業務システムを利用できるVDI(Virtual Desktop Infrastructure)が注目を集めています。VDIはサーバー上でWindows OSを仮想マシンとして動作させられ、リモートアクセスにより普段利用しているWindows PCと同じ操作性を実現する仮想デスクトップです。

従来は、サーバーの設置場所を自社データセンターにして、自社で運用管理にVDIを使うスタイルが一般的でした。しかし最近では、サーバーをパブリッククラウド上に設置し、クラウドサービスのようにVDIを利用するスタイルも広がっています。その際にサーバーの運用管理をクラウド事業者が担うサービスもあり、ここではそのサービスを「VDIソリューション」と呼びます。

また、クラウド上からVDIを提供するサービスをDaaS(Desktop as a Service)と呼ぶこともあります。DaaSとVDIソリューションは同じサービスですが、あえて両者の違いを述べるなら、クラウド事業者がサーバー基盤の運用管理をカバーしてくれる部分と言えます。DaaSの場合は、Windows OSが稼働するサーバー基盤の管理まで事業者が担うことが多いですが、VDIソリューションの場合は、サーバー基盤の管理はユーザーが行えるケースもあります。

VDIソリューション(DaaS)は現在、さまざまなパブリッククラウドで利用することができます。以降で、Microsoft Azureを活用したMicrosoft Azure VDI 三大ソリューションを紹介しましょう。

Azure VDI 三大ソリューションの関係

Windows 10マルチセッションでアプリ互換性の担保とリソース集約が可能な「AVD」

Azure VDI 三大ソリューションの一つめは、「Azure Virtual Desktop(AVD)」です。2019年11月に正式リリースされ、「Windows Virtual Desktop(WVD)」と呼ばれていましたが、マイクロソフト純正のDaaSとして2021年6月に現在の名称に変更されました。

AVDの特徴は、Azure特有のサービスとして提供されることです。これまでのVDIソリューションではゲートウェイサービス、ロードバランサー、コネクションブローカーなどのコントロールプレーンの構成が必要でしたが、AVDではマネージドサービスとしてマイクロソフトが各構成を管理します。

また、Windows 10やWindows Serverなどの仮想マシンは、ユーザーのAzureサブスクリプションとして利用できます。そのため、すでに閉域網(ExpressRoute)やVPNを使ってMicrosoft Azureを利用している場合、環境を変更することなくAVDをスムーズに利用開始できます。

さらに、ほかのVDIソリューションにはないAVDの特徴として、Windows 10マルチセッションがあります。VDIソリューションでは、1台のWindows OSに複数のユーザーがアクセスする場合、Windows ServerをRDS(Remote Desktop Service)ホストとして使っていました。しかし、Windows Serverを活用しているため、クライアント向けアプリケーションの互換性が問題になる場合があったのです。Windows 10マルチセッションでは、1台のWindows 10に複数人がそれぞれ独自の環境をもったユーザーとしてアクセスできます。これによりアプリケーションの互換性を担保しつつ、1台の仮想マシンに複数のユーザーを集約する「リソース統合」を実現可能です。

Windows10 マルチセッションの価値

Citrixの高機能な管理プレーンを利用できる「Citrix Cloud」

Azure VDI 三大ソリューションの二つめは「Citrix Cloud」です。AVDの場合、VDIソリューションの構成に必要なコントロールプレーンはMicrosoft365のサービスとして管理されます。しかしCitrix Cloudの場合は、コントロールプレーンをCitrixのマネージドサービスとして提供できます。

Citrix Cloudの特徴は、オンプレミスやMicrosoft Azure以外のパブリッククラウドサービスでもCitrixのマネージドなコントロールプレーンと接続し、クラウドサービス(DaaS)として利用できることです。ただ、Citrix Cloud Connectorと呼ばれるコンポーネントが正常に動作する必要があります。

また、Microsoft Azureで利用する場合は、Windows 10マルチセッションの利用も可能です。オンプレミスVDIのように、Windows ServerのRDSホストを展開したり、通常のWindows 10 VDIを展開したりすることもできます。

Citrixのコントロールブレーンを用いるメリットは、Citrixがオンプレミスで培ってきた高い管理機能を利用できることです。例えば、転送プロトコルとしてRDPだけでなく、CitrixのICA画面転送プロトコルによるハイパフォーマンスな描画も可能です。

VDIソリューションとして積んできた実績を鑑みて、大規模な環境で利用されるケースが多いようです。

Citrix CloudとWVDの関係

マルチクラウド活用に便利な機能を備えた「Horizon Cloud on Azure」

Azure VDI 三大ソリューションの三つめは「Horizon Cloud on Azure」です。AVDやCitrix Cloudと同様に、管理コンポーネントがVMwareのマネージドサービスとして提供されます。

ただ、全ての管理コンポーネントはVMwareのマネージドには含まれません。コントロールプレーンの多くを、ユーザー側のMicrosoft Azureサブスクリプションに展開することが大きな違いです。具体的には、Windows ServerのRDSホストやWindows 10 VDIなどと同じように、ユーザー管理のインフラ上にコントロールプレーンが展開されます。

VMwareでは、VMware HorizonをMicrosoft Azure以外のパブリッククラウド上でも提供しています。Horizon Cloud on Azureの特徴的な機能としては、Universal Brokerがあります。さまざまなクラウド環境における複数のVMware Horizonのインスタンスに接続する機能で、オンプレミスや他のクラウドのVMware Horizon環境をまたがって、一つのプールとして管理することができます。これによってマルチクラウドの活用が容易になり、管理コストの低減にもつながります。

Horizon Cloud on Azureの立ち位置

このように、Microsoft Azure VDI 三大ソリューションは、インフラ部分はMicrosoft Azureとして共通しており各社に違いはありません。Windows 10マルチセッションも三大ソリューション全てで利用可能です。各社独自のコントロールプレーンをどう利用するかによって、自社に適したサービスを選択しましょう。

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