「Azure VMware Solution(AVS)」とは?3つの特徴とユースケース

「Azure VMware Solution(AVS)」とは?3つの特徴とユースケース

Azure VMware Solutionは、VMware vSphere環境をMicrosoft Azure(以下、Azure)に移行したり、オンプレミスとAzureを連携するハイブリッドクラウドを構築したりするための「VMware Cloud」のソリューションです。そのサービスの成り立ち、これまでの沿革、構成要素、メリット、想定ユースケース、価格、利用手順、注意点などを整理します。

目次

Azure VMware Solutionとは何か、どんなメリットがあるのか?

Azure VMware Solutionは、VMware vSphere環境を構築するためのソフトウェア一式をAzureのベアメタルサーバー上に構築し、顧客向けの占有環境として提供するクラウドサービスです。ヴイエムウェアとマイクロソフトが共同で開発し、2020年5月にプレビュー版の提供をスタート、2020年12月1月から、Azureの東日本リージョンで利用が可能になりました。

従来、オンプレミスのVMware vSphere環境をパブリッククラウドに移行しようとすると、仮想マシンの変換や移行作業、パブリッククラウドのノウハウを学習する手間や時間がかかっていました。具体的には、VMware仮想マシンをAzure上で稼働させるための仮想マシンに変換し、システムやデータを移行して、Azureの操作体系を習得する必要がありました。

これに対し、Azure VMware Solutionは、クラウド上の環境もVMware環境になるため、これまで培ってきたVMwareのスキルやノウハウをクラウド環境でも活用し、クラウド移行の手間と時間を最小限にすることができます。

Azure VMware Solutionの概念図

Azure VMware Solutionの3つの特徴

Azure VMware Solutionには、大きく3つの特徴があります。

1つ目は、VMwareプライベートクラウド環境を、Azure内の1st Partyサービスとして提供することです。Azure VMware Solutionは以前「Azure VMware Solutions」として提供されていた3rd Partyサービスの1つでしたが、その後、ヴイエムウェアによる正式な認定・認証を受け、開発、運用、販売、サポートいずれにおいてもマイクロソフトが一気通貫で対応するサービスとなりました。

2つ目は、既存オンプレミス環境からほとんど変更を加えることなく、拡張や移行が可能なことです。Azure VMware Solutionは、VMware が提供するハイブリッドクラウド基盤構築の標準仕様とも言うべきVMware Cloud Foundation(VCF)に基づいて構築されています。オンプレミスで利用しているVMware環境との互換性が非常に高く、VMware HCXというクラウド移行のための機能を用いることで、容易に拡張や移行が可能です。

3つ目は、Azureネイティブサービスとの統合によるVMware ワークロードの最適化が可能なことです。Azureでは現在200を超えるサービスが提供されています。それらの機能を組み合わせて利用することで、クラウドらしい柔軟性や拡張性、俊敏性を享受できます。

Azureへの段階的な移行を実現

Azure VMware Solutionのコンポーネントやスペックは?

Azure VMware Solutionを構成するコンポーネントは、VCFとして提供される、VMware vSphereVMware vSANVMware NSX-TVMware HCX AdvancedVMware vCenter Serverを中心に構成されています。

最小の初期デプロイは3ホストで、インスタンスはAV36を利用します。AV36インスタンスは、36コア、576GBのメモリ、15.36 TBのオールフラッシュストレージ、3.2TBのNVMeキャッシュで構成されます。利用料金は利用に応じて1時間当たりの課金となりますが、1年予約または3年予約によってディスカウントを受けることができます。

ネットワークは、閉域網接続のAzure ExpressRouteやインターネット接続を用いたVPN接続、Azure Virtual WANなどのサービスが利用できます。ストレージはvSANの保存データの暗号化が既定で有効で、ユーザー管理やアクセス権管理もAzure Active DirectoryやvSphereのロールベースアクセス制御が利用できます。

新しい環境を構築する場合は、AzureポータルやAzure CLIからデプロイすることができます。基盤の管理やログの管理などもAzure Portalを介して実施できます。

Azure VMware Solutionの構成要素

Azure VMware Solutionのユースケースや利用手順は?

Azure VMware Solutionの主な用途は大きく4つあります。「ハイブリッド化によるデータセンター拡張、既存データセンターの縮小、廃止」「事業継続と災害対策 (BCDR)」「スピーディーかつシンプルなクラウド移行」「アプリケーションのモダナイゼーション」です。いずれの場合も、VMware HCXを用いることで、従来のような仮想マシンの変換や移行に伴う影響度調査などを行わなくて済むことがポイントです。

HCXを利用すると、IPを維持したまま移行するためのL2延伸や、特別な回線不要で仮想マシンの移行を実現するWAN最適化が可能です。また、システム停止時間を最小限で大量の仮想マシンを移行可能にするバルクマイグレーションや、停止できないワークロードのためにVMware vSphere vMotionを用いたライブマイグレーションも可能です。導入後は、NSXなどを意識することなく、L2延伸、vMotionをvCenterから操作できます。

VMware HCXによるポータビリティを実現
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