仮想化スキルをコンテナでも活かす!VMware Tanzuのユースケース

仮想化スキルをコンテナでも活かす!VMware Tanzuのユースケース

Kubernetesの新たな提供形態であるVMware Tanzu(以下、Tanzu)によって、多くの企業がこれまで構築してきた仮想マシンとコンテナを一元管理できます。特に、仮想マシンとコンテナのハイブリッド環境を共通した仕組みで管理できる機能は注目に値します。この記事では、Tanzuのユースケースをおさらいしながら、具体的に導入企業のこれからのIT基盤にどのような効果をもたらすのかを紹介していきます。

目次

Tanzuの3つのユースケース

Tanzuのユースケースは、主として3つあります。1つめはインフラのモダナイゼーションです。コンテナを駆使したKubernetesに対応するシステム環境を構築するべくアプリケーションをTanzuの管理上にリフトすることで、俊敏なアプリケーションのデリバリー体制をつくることができます。

2つめはDevOpsの推進です。デジタルトランスフォーメーション(DX)はビジネスと直結するため、自社内に開発チームを持ち、運用と一体化させておくことで、必要なアプリケーションをスピーディに開発し、ビジネス化できます。

3つめはDXを推進するための新たなアプリケーション開発です。優れたビジネスアイデアを、すぐにでもそれをアプリケーションとして形にできることがビジネス成功のカギになります。Tanzuはまさに、IT面から企業のそうした取り組みを支援するツールといえるのです。

具体的には、既存のオンプレシステムをクラウドネイティブなアプリケーション基盤へリフト&シフトしTanzuで管理することで、新しい機能の開発から実装までの期間を大幅に短縮できます。すなわち、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させるとともに、PDCAをまわした継続的な改善が実現できるようになるということです。

Tanzuの主なユースケース

VMwareに関わる人材をクラウド環境で活かす

VMwareはこれまで、vSphereを核とする仮想マシン環境を、AWS、Azure、Google Cloud、IBM Cloud、Oracle Cloudなどさまざまなクラウドへと展開することで、オンプレミスの環境と仮想マシンをシームレスにつなぐマルチクラウド環境を実現してきました。

Tanzuを使うことで、これまでVMwareに関わってきたスキルのある人材リソースを生かしながら、すぐにでも最新のコンテナ環境を構築できるというメリットがあります。例えば、ERPやSCMといった基幹系システムはこれまでどおり仮想マシンで動かしながら、そのデータを用いたアプリケーションについてはコンテナ上に構築するといった使い分けも考えられるでしょう。

仮想マシンとコンテナを一元管理できるTanzuは、長年培った仮想マシンの資産を生かしながら、先進的なビジネスを可能にする最新のアプリケーションをコンテナで開発したいという企業にとって、有力な選択肢となるでしょう。この意味でTanzuは、VMwareのマルチクラウド戦略の柱だと言ってもよいかもしれません。

マルチクラウド環境を見据えたVMwareの動向

ここで、近年のVMwareの動きを振り返っておきましょう。2018年11月、VMwareはKubernetes関連のベンチャー企業だったHeptioを買収します。VMwareはその狙いを、オンプレミスとマルチクラウド環境におけるKubernetes活用であると説明しています。

その後VMwareは、拠点間のWANを仮想化する製品「Velocloud」、マルチクラウド環境またはマルチアカウントを統合管理する製品「CloudHealth」、アプリケーションデリバリコントローラーの「Avi Networks」、モダンアプリケーション開発を支援する「Pivotal Software」、モダンアプリケーションのセキュリティ企業「Carbon Black」といった企業の買収に動きます。

そして2020年3月に、Tanzuを正式にリリースします。VMwareは「KubernetesはVMwareにとって、クラウドや20年前の仮想化、あるいはおそらくJavaと同じくらい、重要な意味を持つ」と話しています。2020年11月にオンラインで開催された年次イベント「VMworld 2020 Japan」の基調講演でも、アプリケーション分野で注力する分野としてKubernetesを挙げ、Tanzuの展開に注力すると説明しています。

あらゆる業界でDXの推進が要請される中で、クラウドネイティブなアプリケーション開発・運用が企業にとって重要な取り組みになることを示唆しているものと言えるでしょう。

Tanzuの4つのエディションと最新動向

2020年9月にはTanzuの4つのエディションとして、「Tanzu Basic」「Tanzu Standard」「Tanzu Advanced」「Tanzu Enterprise」を発表しました。vSphere環境でのKubernetes実行であればBasic、マルチクラウド環境でのKubernetesの実行と管理であればStandard、開発者向け機能が追加され、ライフサイクル管理や高度なロードバランサなどの機能が追加されたAdvanced、自動化されたアプリ実行環境による開発生産性向上であればEnterpriseとの使い分けるとしています。2021年1月現在、Tanzu Basic、Tanzu Standard、Tanzu Advancedを既に提供しています。

米国で開催された2020年のVMworldでは、「VMware Cloud on AWS」におけるTanzuサポートも発表。さらに、「Google Cloud VMware Engine」と「Oracle Cloud VMware Solution」におけるプレビューサポートを明らかにしています。さらに、「Microsoft Azure VMware Solution」においてもプレビューサポートを予定しています。

これらのTanzuおよびKubernetes環境も、統合された制御プレーンによる一元管理が可能になります。オンプレミスとクラウド環境の垣根を解消することにつながるため、管理者の手間が軽減することはもちろん、既存のデータ資産を十分活用した上で最新のアプリケーション開発に着手できます。

長年にわたり蓄積したオンプレミスの資産をベースにしながら、マルチクラウドやコンテナを使った最新のアプリケーションを開発し、ビジネスにおける競争力を持つ基盤開発を支援するVMwareのソリューションは、企業がDXを推進し成長を続けるために不可欠なIT基盤と言えるでしょう。

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