テレワークで需要上昇中のDaaS徹底解説!VDIの違いと注意点とは?

テレワークで需要上昇中のDaaS徹底解説!VDIの違いと注意点とは?

オンプレミスのVDIとは異なり、機器を持たずサブスクリプションで利用できることが大きなメリットのDaaS(Desktop as a Service)。新型コロナウイルス感染拡大に伴うテレワークに対応するうえでも大きな関心を集めています。DaaSを正しく理解するために、メリット、デメリット、注意点を整理します。

目次

DaaSとは?

DaaS(Desktop as a Service)は、AWS(Amazon Web Services)の「Amazon WorkSpaces」やMicrosoftの「WVD:Windows Virtual Desktop(現AVD:Azure Virtual Desktop)」など、主要なパブリッククラウドベンダーがサービスを投入したことで話題になっています。Amazon WorkSpacesは2014年に、Windows Virtual Desktopは2019年にそれぞれ正式リリースされていますが、新型コロナウイルスのパンデミックに伴って、在宅勤務やテレワークが広がる中、これまでVDIやDaaSに関心を持っていなかった企業も採用を検討するようになりました。

ただ、DaaSについては、これまでのVDI(Virtual Desktop Infrastructure)と何が違うのかよく分からないという声や、これまでVDIで利用している仮想マシンをDaaSに移行することはできるのかといった声も耳にします。そこで、DaaSとVDIの違いを中心に、DaaSのメリット、デメリット、注意点を整理します。

DaaSとは、仮想化したデスクトップをクラウドサービスとして提供するサービスです。クラウドであるため、従量課金(サブスクリプション)形式で利用でき、必要に応じてスケールさせたり、構成を柔軟に変更したりできます。また、運用管理はクラウドプロバイダーが担うため、セキュリティパッチの適用やOSのアップデートなどをユーザー側で実施する必要がありません。さらに、サービスを提供しているクラウドプロバイダーのクラウド基盤と同じサービス基盤を利用するため、そのクラウドプロバイダーが提供するほかのサービスとの連携がしやすいことも特徴です。

VDIとの違いとは?

DaaSとVDIとの違いは、サービスを提供する基盤の違いにあります。

VDIは自社で管理するデータセンター内にハードウェア機器を設置し、VDIを実現するためのソフトウェアで環境を構築します。環境は、サーバー仮想化技術を用いてユーザーのクライアントPCをサーバー上で仮想マシンとして仮想化して管理します。このためVDIは、ハードウェアとしてサーバーやストレージ、ネットワーク機器が必要になります。近年では、これらを一体化させたハイパーコンバージドインフラ(HCI)が活用されるケースが増えています。VDI環境を構築する専用ソフトウェアとしてはVMwareの「VMware Horizon」などがあります。それぞれ専用の仮想化ハイパーバイザーを用いて、サーバーホストを仮想化し、専用の仮想マシンとしてクライアントPCを構成します。

これに対し、DaaSは、自社で用意した環境ではなく、クラウドプロバイダーが提供する環境を利用します。ハードウェアのセットアップに伴う環境構築も不要で、契約すればすぐに仮想マシンを割り当て、デスクトップマシンとして利用することが可能です。例えば、Amazon WorkSpacesの場合、AWSの管理コンソールからサービスの利用を開始する手続きを行い、ログインのためのパスワードの設定やクライアントソフトの設定をするだけで、1時間もしないうちにDaaSの利用が開始できます。

また、「VMware Horizon」のVDI環境を「Microsoft Azure」などのクラウド上に構築することができる「VMware Horizon Cloud 」といったDaaSソリューションも登場しています。

DaaSの概要

DaaSのメリット

DaaSのメリットの一つは、パブリッククラウドサービスを利用できることです。先述したように、ハードウェア構築に伴う初期コストがかからないこと、従量課金により運用コストを最適化できること、リソースの追加・拡張・廃棄が容易なこと、インフラにかかわるメンテナンスが不要になること、リソースを複数の企業で共有することで全体の利用料金を低くできることなどです。

また、パブリッククラウドプロバイダーが提供する他のサービスとの組み合わせがしやすいというメリットもあります。

例えば、データウェアハウス(DWH)などをクラウドで構築している場合、ローカルPCにインストールしたBIツールからクラウド上のDWHにアクセスすると、レスポンスが遅く感じることがあります。こうした場合に、DWHサービスを構築したクラウド側と同様の環境に仮想デスクトップを配置することで、BIツールの応答が速くなります。

クラウドプロバイダーは現在、さまざまなサービスを提供しています。それらをデスクトップと組み合わせることで、さまざまな応用が可能です。例えば、電話関連のサービスと連携させコールセンターの仕組みをDaaSで構築したり、GPUを用いたサーバーと組み合わせCAD環境をDaaSで構築したりといった活用例が考えられます。

さらに、テレワークに伴うリモート管理がしやすいこともメリットです。VDIでは、ハードウェアや環境のメンテナンスのために機器が設置されたデータセンターや管理コンソールが利用できるオフィスに赴く必要があります。DaaSの場合、管理コンソールにアクセスできる環境であれば、基本的にどこからでも作業を実施できます。

DaaSを正しく使うために

一方、デメリットや注意点もあります。

DaaSのデメリットのひとつは、環境構築と運用がクラウドプロバイダーに依存してしまう点です。ユーザーが利用するリソースを細かく制限したり、クラウドで提供されていない特殊な環境を構築したいといったカスタマイズは基本的にはできません。また、障害が発生したときのリスクをユーザー側で一定程度許容することが求められます。独自の運用管理ポリシーやセキュリティポリシーも適用できないため、クラウドに合わせたポリシーが必要になります。

DaaSの注意点としては、環境の構築方法がそれぞれ異なるため、互換性が少なくなる点です。Amazon WorkSpacesとWindows Virtual Desktopの仮想デスクトップを相互に移動して利用することはできません。Windowsライセンスを持ち込むことはできても、VDI上のWindows仮想マシンをそのままDaaSに移行するといったこともできません。

また、仮想デスクトップを安全に利用するための周辺の仕組みも必要になります。例えば、ユーザーアカウントの管理、DaaSを利用するデバイスの管理、仮想デスクトップ内で利用するアプリケーションの管理などです。DaaSによっていつどこからでも仮想化されたデスクトップを利用できるようになりますが、そこにアクセスするためのPCやタブレットはそれとは別に管理する必要があります。

DaaSを正しく使うためには、DaaSだけでなく、PCを利用する環境全体を見ながら、必要なものを適切に揃えていくことが重要です。

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